捏造幻想水滸伝X〜弐〜
□漂流の羽根
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それってどういうこと…と思案して。
シェラヴィはひとつの結論に達し、渋い顔になった。
「…ダインさんは、サリーシャさんの婚約者なんでしょ?」
「そうであれば、と願っていた部分はありましたが、正式にそうというわけではありません。
娘はその気のようですが…人の心に命令はできませんからね」
ソリスのあまりの放任ぶりに、シェラヴィはかえって毒気を抜かれてしまった。
「ソリスさんは娘の幸せ、考えてないの?」
「考えているからこそ、です」
…何だか禅問答じみてきた。
責めあぐねるシェラヴィに、ソリスの反撃。
「王子殿下は、ユーリ様が欲しいのですね」
「…ユーリ様、ね」
鼻白んで呟いたシェラヴィに、ああ失礼しました、と、ソリスは例の笑みで詫びた。
「つい昔の呼び方をしてしまいました。彼女にもよく咎められるのですが。
…王子殿下がユーリさ…ユーリ殿をご所望なのは、戦力として、ですか?」
「それもある」
「それ『も』ですか」
ソリスは苦笑した。
このヒトはいつもこんな感じだ。表に出る感情の波が酷く緩やかで、読みづらい。
悲しそう、とか、嬉しそう、とかは漠然とわかるのだが、
内心で何を考えているのかさっぱり相手に悟らせない。
やりづらい相手だ、とは思うが、
前線都市セーブルをまがりなりにも他国の侵略から守り続け、
ダインをはじめ臣下や領民にも慕われていることを考え合わせると――。
やはり、やりづらい。シェラヴィは嘆息した。