捏造幻想水滸伝X〜弐〜

□黒幕登場・前編
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「あのね、祈りがこもってるんだって」

説明下手な諸先輩方をフォローするように、
件のパンをふたつトレイにキープしたアゼルが補足してくれた。

「外のヒトは大変だし、危ない目にもいっぱい遭うし。
 だから、これ食べて元気出して頑張ってね、って、
 ユーリさんが心を込めて焼くんです」

でもね、と、アゼルは続ける。

「でも、朝からそんないっぱいは焼けないでしょう?
 だから、外回りのヒトだけ特別、なんです」

「いざドサ回りだぜ! って日に米とか出されたら、何気にガックリくるよな」

くるみパンを頬張りながら、エルトは言ったが、

「えー? オレは断然、朝はごはんにおみそしる派だなー」

アスはパンの中のくるみをほじり出しながら、のほほんと受ける。

「じゃあ食うな! それ寄越せ!」

「やだねー。焼きたてのが美味いしー」

何か…いい話だなぁ、と、シェラヴィはじんわり心が暖かくなる気がした。

「まったく、何なんだいこの軍は。感動巨編的展開ばっかりじゃないか」

サイアリーズは口では茶化しているが、
内心ではシェラヴィと似たり寄ったりの心境だったのだろう。
その証拠に、寝起きとは思えない程優しい表情をしている。

「あれはそういう娘です。
 感動巨編的展開を、当たり前のようにしつらえて見せます」

ダインが隊長でも武将でもない顔で言う。
――何か今、ダインさんが妙に…。

シェラヴィはダインを見上げた。
妙に何だ、と訊かれれば答えようもない。
何かが引っかかる、としかシェラヴィには表現できない。

いくら精神的に大人びているとは言え、彼はまだまだ少年だった。
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