捏造幻想水滸伝X〜弐〜
□黒幕登場・前編
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「あー、それにしてお腹減ったー。ここ、いい匂いしてるんだもん」
シェラヴィはテーブルの上のパンをつかもうとした。が、
「くぉら! 何やってんだよバカ!」
エルトの容赦ないツッコミが入った。
「くるみパンはドサ回りの特権なんだよ、勝手に持ってくな!」
「…何それ?」
ユーリは既に厨房に戻り、わんこそばよろしく空の皿にオムレツを補充している。
仕方なくシェラヴィはエルトに尋ねた。
「そっちの食パンはいくら食ったってかまわねぇよ。でも、このくるみパンはダメだ!」
「…説明になってないし」
「それはユーリ殿の手づくりです。
そちらの食パンは出入りの業者から仕入れていますが」
いきなり背後から『説明』があり、うわぁぁ、とシェラヴィは飛びのいた。
「ああダインさんかビックリした…。
おはよう。気配、全然感じなかったよ」
「これは失礼いたしました。驚かすつもりはなかったのですが」
ダインは真顔で謝罪して、
「お話は伺いました。今日、だそうですね」
手短に確認してきた。
「話が早くて助かるよ。…で、くるみパン? は、何で駄目なの?」
ユーリさんがつくったのなら味見してみたい、と、シェラヴィが言うと、
「それは、王子殿下でもご遠慮願いましょう。本日外警備の者の特権です」
苦笑して、ダインは言い切った。