捏造幻想水滸伝X〜弐〜

□anybody's game
3ページ/8ページ

太陽の眷属の発動の後、すぐさまユーリは優しさの流れを使役した。
これで振り出しに戻ってしまった。
いや、振り出しどころかこちらは…と、ベルクートは額の汗を拭う。

『彼女は右手を使わないでしょうが、まず回復役を叩きましょう。
 私のタイタンと、あなたのはやぶさが入れば、片はつきます』

開始前、ダインはそう言った。
確かに回復役を潰すのはセオリーだが…。

――さっきのアレは、何だったのだ?
ベルクートが焦りと共に自問するのは、美しい青白い閃光に対してではない。

動けないダインを一方的にサンドバックにするツインテールの少女にかかって行った時、
返り討ちとばかりに浴びせられた、あの氷の刃は…?

――魔法剣? いや、そんなものではなかった。
剣が氷の加護を得る、どころの話ではない。
あの木の小剣が氷そのものとなって襲いかかって来るかのような…。
試合開始前、こんなお嬢さんに容赦のない、と、気後れしていたが。

――ダイン殿の言う通りだ。ユーリさんを潰さないことには、どうにもならない。


ベルクートはユーリに切りかかるが、
彼女は回避演習実行中とばかりにひょいひょい避けていく。
先程の王子の一撃もあり、体力的にもキツくなってきた。

逃げ回るユーリにかまけていると、
あなたの相手はこっち、と、王子の横槍が入った。弾いて、突き返す。

その王子の背後から、背中にも目をつけろ、とばかりに、ダインの重い一撃が襲う。
王子がもんどりうって倒れた。

――解けたのか。それなら!

ベルクートは相棒の復活を知るや否や、紋章発動の構えを取った。

――ハイア門下秘伝の一撃! …悪く思わないで下さい。

これなら、回避もパリングをできまい。これで彼女は終わりだ。

手応えは、あった。我ながら綺麗に入ったと思う。
しかし、ユーリは倒れなかった。
ふらつきながらも、また、優しさの流れの発動。

――まさか、読んでいた…?

紋章の制約によりバランスを崩しながら、ベルクートは畏れ半分で感嘆していた。
この女性は…恐ろしい人だ、と。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ