昼下がりのティータイム
□I doll 〜番外〜
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来客用のカップを片づけていたサロメの元にまた、来客があった。
いや、ノックもなしにいきなり開扉する輩は客とは呼べぬか。
どちらにしても、茶を淹れてもてなすランクの客ではないし、相手もそれを望むまい。
何しろ、彼は多忙だ。
「よっサロメさん、どーだった?」
シーザーは言うなり後ろ手でドアを勢いよく閉めた。
サロメは彼の無作法を咎めなかった。
彼に何を言っても無駄だと悟っていたことが、ひとつ。
そして、雑多な人種が寄り集まって暮らすこの城では、自身の常識が相手のそれと一致するとは限らないと思い知らされたことも、またひとつ。
「来てたんだろ? 『ジェノサイド・エンジェル』」
シーザーは、使用済のティーカップを見ながらニヤニヤ笑って言った。
「『その呼ばれ方は好きじゃない』そうですよ」
テーブルを拭きながらサロメは返す。
へー、ふーん、と、シーザーは茶化すように…彼のニヤニヤ笑いは、さらに深くなった。
「結構仲良くなれたんだ?」
「さぁ、どうでしょう」
サロメははぐらかす。
「いい女だろ?」
「魅力的な方ですね」
戯れのようなシーザーの言に、サロメは当たり障りなく返したつもりだった。
しかし、シーザーの顔からすっと、ニヤニヤ笑いが消えた。
いや、表情はいつもの、ぼさーっとした眠そうで気怠げなそれなのだが、彼が先程まで発散していた面白がるような雰囲気が、潮が引くようにすっと消えた。
もっともシーザーとて軍師…それも、一流の。
よって、只人が見ればいつもの眠そうで気怠げなシーザーと、何ら変わるところは見出せないだろう。
同業者だからこそ、判ってしまう手の内。
やりづらい相手と思うのはきっと、お互い様だ。