昼下がりのティータイム

□騎士が武器を捧ぐ意味
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パーシヴァルは意味深な謎かけのような言葉をくれただけで、後はひたすら食事へと急かすだけだった。
騎士が武器を預ける意味。…なんてそんなの――。

「わかってるわよ…」

レストランへの道行で、ユーリは頼りなげに呟く。解っている…と、思う。多分、自分では。

「私だって、騎士の妻だったのよ…?」



パーシヴァルは絶対、答えをくれたりしないだろう。
クリスやボルスがどんな反応を示すのかなど訊かなくたって想像できる。
レオに尋ねたら明後日の方向から導き出したような頓珍漢なアンサーが返ってくることうけあいだ。

コスプレの小道具以上の意味を持ったメイスは、実重量よりも重く感じられた。





湖のほとりのレストランは素晴らしく混んでいた。
メイミは同士の連帯感からか、頼みもしないプチケーキをサービスしてくれた。
それだけで、どん底レベルの気分が一気に上昇するのだから現金なものだ。

ユーリはオープンテラスの端のテーブルにロランの姿を見つけて、会心の笑みを浮かべる。
この混み具合なら相席を申し出ても不自然ではないはず。ロランは断らなかった。

人間社会で孤独に頑張るマイノリティーなエルフは、評判通りに寡黙だった。
ユーリは自身の歌の師匠ことネイをほぼ一方的に誉めちぎっておいて、今度彼女の歌を聴きに来て下さいね、と誘ってみた。

機会があれば、との言葉をロランの口から引き出したのは我ながらいい手並みだとユーリは思う。
社交辞令だっていいのだ。ロランの口から、というあたりがポイントなのだからして。


そしてユーリは今、ネイの宣伝以上にロランに尋ねたいことがあった。
彼もまた、ゼクセン六騎士に名を連ねるひとり。
ロランは何も言わんなかったが、相席を申し込んだユーリが大事に抱えるブレスドメイスに、あからさまでない程度に目を見張ったのだから。
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