昼下がりのティータイム

□門番の心得 〜サロメver. 番外〜
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今日もユーリはサロメになりきっていた。
えんじのショールにボルドーの上着、とどめはオレンジのミニスカート。

もうすぐお昼、休憩の時間。
ちらり、と腕にはめた『ケータイからくり時計1号』を見て、ユーリは気合を入れ直す。

昨夜の酒の席で、ユーリの休憩中はパーシヴァルが罰ゲームもとい門番の代理を引き受けてくれることで話がついた。
でも所詮、酒の席での口約束だ。
パーシヴァルも大分飲んでいた。今朝は起きられなかったかも知れない。あまり期待はしないでおこう。



…等とつらつら考えていたら、ふと気配を感じた。
くるん、と振り向くと、サロメが立っていた。
えんじのストールにボルドーの上着。ただ、彼は本職の騎士だからオレンジのミニスカートではなく正装のキルト。
ついでに胸には銀に輝く甲冑をつけている。

「おはようございます」

と、本職の騎士が言った。

「こんにちは」

と、偽物が返す。おはようにしてはちょっと遅い時間だ。

「昨夜はどうも…同僚らがご迷惑をおかけいたしまして」

サロメの律儀な生真面目さに、ユーリは弾けるように笑ってしまった。
相席者一同、少々羽目を外して騒ぎ過ぎ、アンヌの雷が落ちたのは昨日酒場にいた者皆の周知の事実。

でも、周囲の目は総じて暖かかった。
宿敵同士のカラヤとゼクセンの代表者格が、同じテーブルで同じつまみを同じ皿から食べて、意気投合して笑い転げているのだから。

今考えると何があんなにおかしかったんだろうと思うが、酒の席なんて、そんなもの。
いがみ合うより、余程いい。
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