妄想幻想水滸伝X

□this is Love
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「今日は、私の好きなようにさせて下さい」


事の始まりは、妙に思いつめた風なダインの、こんなひとことからだった。



別に、そんなに改まって宣言しなくても、と、ユーリは嗤った。
今日は、なんて、台詞だけは殊勝だが、いつだってほぼダインの好きなようにさせている。

公人としてのダインは、冷静沈着・隙のない凛々しい武将だが、
ひとりの青年としての彼は…正直、大きな声では言えないような性癖の持ち主だったりする。

余所でその性癖を披露して、うっかりヘンタイの烙印を押されたりしないようにと、
そりゃあもう気を使って彼に接しているのだ。
大きな声では言えない性癖――すなわち、隠れサドが露見しないように。苛めるのなら私にしときなさいね、と。

閨でのダインの決め台詞が「淫乱なメス犬」だったり、
緊縛プレイや羞恥プレイがお気に入りだったり、なんてことが知れようものなら、『南の守護神』の名が泣こう。
ついでに、彼に惚れている女の子達も泣くだろう。



「改まっちゃって、変なの。別に、いつも好きなようにさせてるじゃない」

「…あれのどこが」

呆れ返って顔を顰めたダインに、ユーリははっとした。

――ひょっとして、あれじゃ足りないとか?

ユーリとて、何も知らない無垢なお嬢さんではない。
不本意ながら、人生の前半戦において、人に告げるに憚られる生活をしていたこともある。
その知識と経験を総動員して、S男に対する徹底ご奉仕に勤しんでいたのだが…。

――あれで足りないとかって、ありえない。付き合いきれない、超無理。

顔から血の気が引くのを感じた。
やはりダインは、ドSと見える。



とは言え。
滅多にない、妙に思いつめた様子のダインに、否とも告げられず。
内心で慄きながら、どうぞお好きに、と許可を与えた。

ダインはあからさまに安堵していた。
そんなに溜まってるの? などと品のないツッコミを、これまた内心でだけしてみたり。
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