捏造幻想水滸伝X〜弐〜
□漂流の羽根
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夕食後、ソリスの執務室に来客があった。
「ああ、王子殿下。きっとお見えになると思っていました」
ソリスの言を示すように、応接テーブルにはお茶セット一式がしつらえてあった。
用意のいいことだ。
この街の領主は、王子に手ずから茶を振る舞い、単刀直入に尋ねてきた。
「ユーリ殿のこと、ですね?」
「…あれ、バレてた?」
シェラヴィが茶をひと口含むのを待ち、ソリスも自分の分に手をつける。
「そう、ユーリさんのこと。
ソリスさんは、ダインさんにユーリさんを護れ、って主命を下してるんでしょう?
ダインさんが僕のところに来るんなら、
その守護対象も一緒に来るのが筋だと思うんだけど」
シェラヴィは、考えに考え抜いた理論武装でソリスに挑みかかる。
しかし、人生経験において、少年である王子よりも長けているセーブルの領主は、一筋縄ではいかなかった。
「ここだけの話ですが、王子殿下。
その主命はもう大分前に取り消してあるのです」
「……え」
「ユーリ殿に泣きつかれまして、やむなく。
彼女は、ダイン君が彼女を護る為に、
『隊長』らしからぬ言動を取るのが耐えられなかったようです」
「ちょっ…待ってよ。だって昨日は」
「昨日はダイン君の手前、そういうことにしておきましたが。
彼も素直に認めてしまえばよいものを、
主命というお題目がなければ、手も足もでないようです」