捏造幻想水滸伝X〜弐〜

□漂流の羽根
1ページ/6ページ

夕食後、ソリスの執務室に来客があった。

「ああ、王子殿下。きっとお見えになると思っていました」

ソリスの言を示すように、応接テーブルにはお茶セット一式がしつらえてあった。
用意のいいことだ。

この街の領主は、王子に手ずから茶を振る舞い、単刀直入に尋ねてきた。

「ユーリ殿のこと、ですね?」



「…あれ、バレてた?」

シェラヴィが茶をひと口含むのを待ち、ソリスも自分の分に手をつける。

「そう、ユーリさんのこと。
 ソリスさんは、ダインさんにユーリさんを護れ、って主命を下してるんでしょう?
 ダインさんが僕のところに来るんなら、
 その守護対象も一緒に来るのが筋だと思うんだけど」

シェラヴィは、考えに考え抜いた理論武装でソリスに挑みかかる。
しかし、人生経験において、少年である王子よりも長けているセーブルの領主は、一筋縄ではいかなかった。

「ここだけの話ですが、王子殿下。
 その主命はもう大分前に取り消してあるのです」

「……え」

「ユーリ殿に泣きつかれまして、やむなく。
 彼女は、ダイン君が彼女を護る為に、
 『隊長』らしからぬ言動を取るのが耐えられなかったようです」

「ちょっ…待ってよ。だって昨日は」

「昨日はダイン君の手前、そういうことにしておきましたが。
 彼も素直に認めてしまえばよいものを、
 主命というお題目がなければ、手も足もでないようです」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ