捏造幻想水滸伝X〜弐〜
□anybody's game
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それって何の決着? と、混ぜ返すユーリに構わず、
シェラヴィは件の人物達を半ば強引に鍛錬所の裏手に連れ出した。
訓練中の他の兵達に配慮したつもりだったのだろうが、
物見高い兵達は、今度は何が始まるのかとぞろぞろくっついてきてしまったので、あまり意味はなかったようだ。
「ダインさんもベルクートさんも紋章使っていいからね。僕らも使うから」
シェラヴィの人を食った言い草に、ユーリはえっ、と絶句する。
彼は黎明の紋章の試し打ちをする気なのか?
「駄目よシェラヴィ様! そんなことしたらホントに死んじゃうわ!
せめて私達は右手縛りにしましょう?」
「…僕の左手で何をせよと」
がっくりと肩を落とし、シェラヴィが力なく呟く。
ユーリはこんな場面なのに、弾けるように笑い出してしまった。
確かに、金運の紋章がこの場面で何かの役に立つとは思えない。
「死んじゃう、か。…侮られたものだ」
ふん、と鼻で息をついて、武将らしくダインが呟いた。
「私達は構いませんよ。何を使っていただいても」
ベルクートと顔を見合わせ、ダインは言い切る。
勝つ気満々の剣豪コンビに、ユーリの元来の負けず嫌いの本能がむくむくと頭をもたげてきた。
「…そうですね。私は専門外の剣で戦わなきゃならないんだもの。
そのくらいのハンデはもらってもいいわよね」
「専門外が聞いて呆れます」
武将の顔でダインが言い捨てた。
「それで、判定はどうしますか?」
審判約のリオンが尋ねてくるのに、シェラヴィが言う。
「時間無制限。戦闘不能者が出るまで。あとはリオンの判断に任せる」
「戦闘不能…って」
ユーリはまたも絶句した。それでは演習というより、通常の戦闘ではないか。
「回復魔法の使用は不可?」
「使えるものなら使いなさい」
尋ねたユーリに、ダインが許可を与える。
つまりは、その隙はやらん、ということか。
ますます通常戦闘じみてきた。
「……わかりました」
ユーリは羽織っていた上着を脱ぎ、動きやすい格好になった。
「これだけハンデいただければ、充分ですわ…隊長殿」