昼下がりのティータイム

□劇場は今日も満員御礼
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何だろう、近頃城の住人からの風当たりが強い気がする――と、ひそかに悩むサロメ・ハラス32歳。
始めは、流していた。人種のるつぼとも言えるこのビュッデヒュッケ城で『鉄頭』の――自分で言うのも何だが――中枢にある身。
これまでの経緯を鑑みれば、仕方のないことだと。
だから、アンヌやルース、ビッチャムといった面々が自分に対してつらく当たるのは当然の事だと。
むしろ、カラヤクランやリザードの者達に対しては、こちらとしても申し訳ない、という気持ちもなくはない。
だからサロメは彼ら・彼女らからの、

「まったく、酷い男だねぇ」
「人の心を弄ぶ奴は地獄に落ちるって相場が決まってるんだよ」
「よくもまぁ何事もなかったかのような顔をして城を歩けるものだな」

と、いった口撃(?)を、特に気にも留めず過ごしていた。そんなものをいちいち気に病んでいたら何もできなくなってしまう。
こちとら評議会の古狸どもとの長年の腹の探り合いで随分鍛えられている。メンタルの強さには自信があるのだ。


しかし、だがしかし。

それがグラスランドの者達だけでなく、カレリアの傭兵達やハルモニア勢、城の元からの住人や果てはトランや都市同盟の出身者までともなると――

「私は彼らに、何かしただろうか…?」

と、途方に暮れてしまうのだ。



一応、クリスにもそれとなく確認してみたのだが、彼女にはそのようなことはない、とのこと。その点に関しては安堵した。
パーシヴァルにも尋ねてみたが、彼は例の顎に手・小首傾げのキメポーズで、さぁてね、ご自分の胸に訊いてみては? と。
心当たりがないから尋ねているのだ、と、喉元まで出かかったが、パーシヴァルのこうしたのらりくらりは今に始まったことではない。つっかかるだけ無駄だ。





今朝は掃除当番で一緒になったヤマモト家の令嬢に、

「サロメ殿がそのような殿方であったとは…見損ないました」

と、ハッキリ言われた。
わたくしがサナエ殿のお気を損なうことをしましたか、と訊いてみたが、

「本気でおっしゃっておられるのですか? まったく嘆かわしいこと。
 紳士めいた殿方であっても所詮殿方は殿方、お気をつけなさいと申していた父母の教えが身に染みました」

とのこと。本気で訳がわからない。
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