short
□通行人A
2ページ/2ページ
用事を済ませて町を歩く
今日は億越えルーキーの海賊が上陸しているらしい
そのためか通りを歩く人間はあまりいない
「死の外科医ねぇ
殺すのか助けるのかどちらか分からない通り名だ」
「そうかもしれねぇ
が、つけたのは海軍だ」
ふいに足を止めると返事をした張本人が今さっきの会話がなかったかのように追い越して歩いていった
横顔だけで十分だった
手配書でみたその人は、手配書通りに不適な笑みを浮かべていた
ただ一つ違うことは
手配書なんかよりも本人の方が
決意してからは早かった
必要最低限の荷物を持ち、海へと飛び出した
幸せでも不幸でもない
ただ生きているだけの人間が平凡から少しだけ抜け出してもいいじゃないか!
ラメの入ったアイシャドウはやめだ
単色の一番好きな青をつかってどぎついメイクをして
少しでも彼に近づきたいんだ
通行人A
(彼の横顔はいつまでも私のなかから消えてくれない)
。