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□うぬぼれるかれのせりふ
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2.俺のため、だろ?
ある晴れた清々しい朝に部屋のチャイムがなった
朝早くからの来客に内心舌打ちをし、慌てて玄関に出るとそこにはピンク色の彼がいた
「俺に渡すものがあるんじゃねえのか?あ?」
背筋を伸ばせば今よりもさらに大きくなるであろうと予想される体躯を揺らし、フフッフフフッと独特な笑い声を響かせながら言われたその言葉
私には全くもって身に覚えがないのだからどうしようもない
そう言えばだいぶ前に青雉殿にも言われたセリフなのだが、誕生日か何かなのだろうか?
ずいぶんと誕生日が固まっている
「お久しぶりですドフラミンゴ様、誕生日なのですか?」
「おいおい
姫ちゃんよお〜…俺たちがいつぶりに会ったか分かってるか?」
「1ヶ月ぶり…ですか?」
「だったら渡すもんがあるだろ?」
久しぶりに会ったからと言って渡すものがあるのだろうか…?さっぱり思いつかない私にドフラミンゴ様は痺れをきらしたのか
「俺は花を送ったのによぉ」
あ、バレンタイン!
ん?
「でも、ホワイトデーはまだ先ですよ?」
「花のお返しはホワイトデーだが、俺は肝心のチョコをもらってないぜ?」
いや、花だって送られてきたし渡す機会はなかった
結局作ったはいいが渡せないまま、捨てることもせずにしまいこんでしまった
いまさらアレを渡すのも憚られる
「って、部屋に勝手にあがらないでください!」
がさがさ勝手に部屋をあさり始めたドフラミンゴ様は呆気なくアレを見つけた
「あるじゃねぇか」
「あ〜もう、それは大分前のですし、改めて作るのでそのチョコは捨ててください」
ああ、もうこの人と出会ってからこんな風に強引なところに慣れてしまった自分が憎い
普通は勝手にあさらないだろ普通は!しかしこの人に普通を求めても無駄なんだ、しょうがないんだ
だって怖いし!
「だから勝手に食べないでくださいってば!」
「ぐだぐだうるせえぞ?
このチョコ
俺のため、だろ?
この俺様がありがたくちょうだいしてやるよ」
「……〜お腹壊しても知りませんよ!」
結局のところ、こういうところに私は弱いみたいです
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