short

□講釈
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「変化系は気まぐれで嘘つき
これがヒソカに当てはまるとは思えないのはどうやら私だけみたいね」

「何故だい?」

「それに意味もない嘘をつく人間もいるだなんて詭弁ね
全てに意味があるのよ
この世に意味がないなんてことは何もないの、ヒトがヒトであるかぎり
その意味をヒトが見つけることができなかっただけ」




白い白い部屋だった
壁、ベッド、シーツ、カーテン
その部屋に存在するものは全て白い
ここに立つ二人以外は全て白い部屋だ




「じゃあ、君は僕の嘘には意味があるというのかい?」




姫が窓を開ければ暖かな日差しに晴れ渡る空
ささやかな風が部屋へと流れ込む
何も動かない白い部屋の中が風により少しづつ動きはじめた




「ヒソカの嘘に意味があるのかないのかは分からない

ああ、さっきの話と矛盾するだろうって?
違うのよ、ヒソカの嘘はヒソカが嘘をつく行動をしたということなのよ
ヒソカが意味をこめているかどうかはさして大きな問題ではないわ
あなたが嘘をつきたいからつくの、そうでなければ行動に起こさないのよヒトは
何かをしたいということは立派な理由で意義で意味なのよ
行動に起こした以上は、何らかの意味が付加価値としてつけられているの
あとは、そうね、相手の感情を乱すためというのも立派な意味だと思うわ

あ、もちろんこれは私の考えであってあなたの考えとは違っていてもいいの
私は言いたかっただけなのヒソカに

あなたは正直者よね、って」




ささやかな風は彼女の黒い髪を揺らす




「・・・僕は嘘つきだよ」




目の前に立つ姫が嬉しいのか、笑顔で窓から振りかえる




「ほら、ね?あなたは正直者よ」




ヒソカは衝動的に目の前の華奢な少女を抱き締めた

ヒソカは人間だもの、たまには一息ついても良いと思うのよね
独り言のように呟かれる言葉はストンと体の中心にすんなりと居座った



「姫、今日ちょっとだけ嫌なことがあってね
ずっと楽しみにしていたものを横から盗られちゃったんだ
それのために僕にしては手間隙かけたのにダメになったんだ
盗ったやつがね、友人でさ
今は我慢することにしたんだけど、やっぱり嫌なことは嫌だったみたいなんだ」




姫はなにも言わずにヒソカの背中に腕を回し背中を優しく撫でた





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