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□ベッドの上には
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「どうして物語は最初から最後まで幸せだって物語にならないのかな




だって嫌なことも、自分の思う通りにいかないことも、痛いことも、汚いことも
全部現実で体験するんだよ
物語くらいは常に幸せでいたいじゃない


どうして、困難が必要なのかな
困難を乗り越えるって辛い作業は必要なのかな、最初から最後まで幸せでしたでいいと思うの



クロロどうして困難が必要なの?」




自室のベッドの上で購入したばかりの小説を読んでいた姫は本から目をそらさずに呟いた



「そうだな。

自己顕示欲、じゃないか


人というものは、こころのどこかで自分は特別なんだと思いたいんだ


物語は困難があり
それを乗り越えて幸せを掴むドラマチックな人生を歩みたい、現実では体験しないようなドラマチックな人生を、だ



願望を叶えるために、物語を読み疑似体験をして欲求を満たしているのではないか




たとえばお前が読んでいる、その小説を購入するのはほぼ女だろう
女は自身だけを愛してくれる男に出会いたいと願う
頭もよく、顔も良ければそれは最高の男
そんな男が行き倒れているという、現実にはそうそうないシチュエーション

現実離れしている出会いで読者を引き込む
そして恋愛関係になる
普通でない出会いをした男と


普通でない出会いをした男ならばなにか普通ではない事情を抱えているだろう

その事情を解決してまで自分を選んでくれる


そんなシチュエーションに憧れ、疑似体験した女は、そんな恋愛をしたいと思うだろう


現実問題として困難や事情といったものは乗り越えられるほどの女というものは、物語を読んでハッピーエンドを迎えるかどうかなんてものは気にしないさ


自分にとっての現実だからな
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