text...Geass?

□Rouse In My Sense
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一時間というものは意外と短いもので
気が付けば朝食の用意をした従者たちが
「チェルス皇女殿下の目覚め」を待っていた。

「チェルス様、気分はいかがですか。」
従者の1人が優しい声色で聞いてくる。
「えぇ。だいぶ良くなりました。」
私がゆっくりと答えると、
今度はきつそうな声色の女が
「それでは医者の手配はいりませんね。 
 これ以上予定を繰り下げるわけには
 いかないので、
 もうご朝食を摂って頂きたいのですが。」
顔を見ると明らかに不機嫌そうだ。
その言葉遣いにびっくりした従者の1人が
急いで訂正を入れてくる。
「いえ、お気になさらず。
 気分が悪ければまだ余裕はありますし。
 プレルさんの言うことを
 毎回鵜呑みにされなくても良いのですよ?」
「そんなことではこれから困るのです。
 シェリア、あなたはただのメイドなのだから
 口を挟まないでくれるかしら?」

(ははぁん。
分かったわ。
きつそうな女=プレル、
優しいメイド=シェリア、ね。)
急いで顔と名前を頭にいれる。
仮にも、私はチェルス・エル・ブリタニアとして
しばらく生活するのだから・・・。
覚えておかなければ。

「プレル、分かっています。
 これからは私も皇族の一員。
 規律を守らなくては、ね。
 シェリア、心遣いありがとう。
 でも、私は大丈夫。」
「チェルス様・・・。」
「さぁ、プレル。
 朝食を持ってきてくれるかしら?」
「かしこまりました。」
シェリアが私を心配そうに見つめている。
「大丈夫だから・・・。」
もう一度言うとシェリアは
ようやく退散したようだった。

はっきり言って、私は自信がなかった。
成り行きで背負ってしまった、
チェルス・エル・ブリタニアという名前。
でも、私は彼女の性格まで
知っているわけではないのだ。
名前と顔、それと記録された経歴だけ。
たったそれだけで1人の人間になりきれるのか?
否、それは無理だろう・・・。
どんなに私が頑張っても、
所詮は他人が模倣している程度・・・。
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