稲妻11小説

□また逢う日まで
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肌寒い空気が日本を覆い始め、あと1ヶ月もすれば初冬を迎える。木の葉は枯れ役目を終えたかのようにヒラヒラと地に落ちる。それはより一層夕暮れを際立たせる。日本の風物詩の一つだ。

そんな中、雷門町の鉄骨広場に4つの人影があった。


「あと3ヶ月でオレ達も卒業だなぁ…。」

一つの影が口を開いた。頭に橙色のバンダナを付けている円堂が自分の重々しい気持ちが伝わるようにポツリと呟いた。

円堂の言葉に誰も返さない。各々は顔を合わせようとはせず視線を反らしている。次に口を開いたのはまた円堂だった。


「オレ…さ、雷門高校を受ける事に決めたんだ!場所も近いし何よりオレの成績じゃ地元が精一杯だったよ。」


へへっと円堂は実際の心情とは裏腹に明るく話す。それを察したか残りの3人が順番に口を開き始める。


「オレは帝国学園に戻る事にした。あそこは勉学も部活も両立出来るし何よりオレの故郷だからな。最後にけじめはつけたい。」

「僕も北海道に帰る事にしたんだ。アツヤの事とか色々あったけど、やっぱり僕は北海道が好きなんだ。」

「オレは都内の私立高校を受ける事にした。ここから大分離れてるから多分寮生活になると思う。」


全員が話し終わるとそっか、と円堂は呟いた。そして3人に背を向けていた円堂がくるっと振り向き3人の顔を見た。




「でも、オレ達場所が離れてても絆は壊れないんだよな?」


円堂はニッコリ笑った。それを見た豪炎寺、鬼道、吹雪は一回唖然とした顔をしてすぐ笑い声を漏らした。


「っはは!その通りだな!」

「あぁ全く、オレ達は何で心配してたんだかな。」

「ホントホント!高校違うだけで壊れるほど僕らの絆は脆くない事ぐらい分かってたのに。」


4人とも息を荒らあげ笑いだした。その声にもうさっきまでのように上辺だけの明るさ無かった。いつも通りの、本当の笑い声。円堂が息を整えいつものように話しだす。


「それじゃ次一緒にサッカーする時は敵同士って事だな!高校生にもサッカーの大会ってあったよな?」

「あぁ、確かFF高校生大会がある。中学のと何ら変わりは無いだろう。」

鬼道が言い終わるとそういう事には無知な円堂がへぇーと感心をする。


「よし!皆、丸くなって手出せ。」

「??」


円堂が4人で円を描いた中心に手を出し上に段々と3人が手を乗せる。


「また逢う日まで、負けんじゃねぇーぞ!?」


『おぉ!!』

そう4人は出るだけの声をだし大きく上に手を掲げて約束をした。
もう今の彼らには不安の欠片は一つも無い。





―――――――また逢う日まで

            完



(普通こういうのって卒業式にやると僕は思うんだけど)
(今やっちゃう辺りが円堂らしいよな)
(それよりまずは高校に受かる事だな)
(ゔっ……)




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