稲妻11小説
□いつまでも君の
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「もうFFIが終わって3ヶ月も経つんだなぁ…」
「そうだな」
部活の帰り道である河川敷の脇の少し整えてある砂利道を円堂と豪炎寺はペースを揃えて歩く。
もう日は落ちていて周りには誰も見当たらない。静かな空間には砂利を踏む音が定期的に聞こえてくるだけ。
「だってさぁFFIも終わって皆帰っちゃうしさ、そしたら綱海と土方は受験だろ?時間が経つのは速いよ」
「…寂しいのか?」
豪炎寺は肩でバックを背負い横目で円堂を見る。
円堂は顔を斜め上にあげ、額の部分にバックのベルトを掛けながら歩いている。はたから見たら間抜けな姿だが、周りには誰も居ない。
「んー…まぁな。キャラバンの時から旅してた大事な仲間達だったし、やっぱり居なくなると寂しいよ…」
豪炎寺は素直だな、と失笑する。
「確かに俺もアイツ等が居ないと不思議な感じがするな」
「だろ!?オレもっと皆と一緒にサッカーしたかったよ!」
円堂は両手を上にあげ叫びだした。その衝動で額にあったベルトはずり落ち円堂の首下へと重力の為すがままに落ちる。
ぐえっ、と円堂は蛙の鳴き声の様な苦痛の声を出す。
「っははははは!」
円堂がゲホゲホと3、4回咳をするとそれを見ていた豪炎寺が笑いだす。きっとぐえっの時点でだいぶ堪えていたのだろう。しかし円堂の苦しそうな顔に我慢出来なくなったのだ。
「ゲホッ、豪炎寺笑いすぎじゃないか?」
「く、すまな…はははっ!」
豪炎寺は口に手を当て笑いを堪えようとするが無駄な努力のようだ。
「…むー。そういやさ、土方と綱海はさどこの高校を受けるとか聞いた?」
「…はぁ。確か土方は沖縄の高校を受けるとか言ってたな。」
豪炎寺は息を堪えいつも通りの単調な声で話す。
「綱海は?」
「アイツはFFIのせいで全く勉強してなかったから本土の高校をスポ選で受けるらしいぞ。」
「ははっ綱海らしいや!」
「オレ達はさ、どうなるのかな…」
「は?」
いつも陽気な声で話す円堂がいきなり声の調を落としポツンと呟く。驚き円堂の方を向いてみると顔を俯かせ暗い雰囲気を漂わす。
「いや、土方と綱海みたいにさ離ればなれになっちゃうのかな…」
「円堂…」
「オレは雷門、鬼道は帝国、吹雪は白恋、豪炎寺は木戸川。前からずっと一緒だった感じがしてたけど元は皆違う学校だったんだよな…忘れてたよ。」
「円堂、オレは…」
豪炎寺の言葉が切れた。不思議に思い顔を横に向けると豪炎寺はこちらを見ており目が合って、自然と足取りが止まる。
「オレは円堂と出会えて本当によかった。もちろん他の皆ともだ。確かにオレらの付き合いは短いかもしれない、けどそれとは関係無いぐらいオレらの絆は強いと思うんだ。円堂だってそうだろ?」
「…うん」
「大丈夫。場所が離れたぐらいじゃオレらの絆は切れやしないぜ。」
「その通りだぜ!」
不意に後ろから声が聞こえた。振り向こうとした瞬間、二人の肩に腕を乗せガバッと覆い被さるように間に割り込む。
「豪炎寺の言うとおりだな。」
「風丸!それに鬼道も!」
間に割り込んで来た風丸の後ろを見れば腕組みをしている鬼道がいた。
「ったく…珍しく円堂が浮かない顔をしていると思えばそんな事を考えていたのか。」
「あ、バレてた…?」
「DFのオレからじゃ丸見えなんだよ。」
全く!と言いながら風丸は豪炎寺と円堂からゆっくりと離れ、そして風丸の隣に鬼道が歩み寄る。
「しかし卒業とは随分気の早い事だな。少なくとも後1年はあると思うが?」
鬼道は少し小馬鹿にした言い方で円堂に冗談を放つ。
「ホントだよなぁ。そんな事思ってるの円堂ぐらいだぜ?きっと。」
「確かにな…」
3人の言葉を聞いていると目が潤んできた。世界がぼやける。まるで水の中にいるかのように。
「そっか…そうだよな。」
円堂は手の甲で涙を拭う。そして3人と向き合いにかっと笑う。
「ありがとう皆!大好きだ!」
3人は少しばかり驚き、一度顔を見合せまた円堂を見ながら声を揃えて言う。
「「知ってる!」」
―――いつまでも君の
(事を想う)
完
(知ってるって何で?)
(見てれば分かる)
(へ?)