ゴーレムの贈り物

□ゴーレムの贈り物
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〔フミウス〕 家令(コンシェルジュ)


夜中、ついに助けをもとめて仔犬の手サロンに駆け込んだ。

「モモ、頼む」

感謝祭のあと、家令室は戦場のようになる。

気まぐれな客たちのスケジュールの把握と犬どもの注文、杼のように飛び交うプレゼントの手配できりきり舞いしながら、笑顔でクリスマスセールの犬を宣伝しなければならない。

この綿のつまったような頭をなんとかしてくれ、と施術台に寝そべった時、正直、このまま三日ほど気絶していたかった。

しかし、眠気はみじんに吹き飛んだ。
モモが聞いた。

「触手って、もう現実にあるんですか」

わたしは一瞬、詰まり、鼻からふるえる息を吐いた。

「な、なにそれ」

「フミウスさんは、外科部長と知り合いだから、ご存知かと」

そこまで言って、モモはすまなげに撤回した。

「すみません。休みにきたのに、つまらないこと聞いて」

頭がいっぱいだったのは、わたしだけではないようだ。神の手を持つモモにも悩ましいことがあったらしい。
しかし、なんだ?

「触手エロ、好きなの?」

「いいえ」

モモは言いためらった。
彼は施術に戻ろうとした。が、手が動かない。

「モモ?」

顔をあげると、モモはうつむき、額をおさえていた。

「すみません。ほかのスタッフに交代します」

声に涙がまじっていた。わたしは彼の手をつかんだ。

「どうした」

「友だちが」

モモは唇をふるわせた。

「死ぬっていいだして」





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