セクシー山賊と犬の王
□調教編
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城に戻ると、ハルキはロレンツォを鉄の檻に入れた。
それを大広間に据え、下人どもに、
「犬として扱え」
と命じた。
銀食器なぞ用いてはならぬ。水は皿に、食べ物は食いさしでも投げよ、といった。
給仕はこまった。こっそり大皿に料理を盛り、檻の床に置いたが、王は前足でそれを派手に跳ね上げて応じた。
「余に這いつくばって、畜生のごとくむさぼれと申すか」
あくる日、大広間に群臣が集められた。
ハルキは彼らに、
「王はかような姿となり、政務は困難である。悔い改め、真に仁君とかわった日にはふたたび執権させるゆえ、それまではかたがたが、衆議して政をなされたし」
とたのんだ。
しかし、そこで檻のなかの王が、
「余にしたがい、ハルキを討つ者は今後重く用いる。いまハルキに与する者は一族郎党にいたるまでことごとく誅すべし!」
と大喝したため、群臣一同は顔色をなくし、広間を去ってしまった。
残ったのは謹厳な侍従長だけであった。
しかたなくハルキは、これにアルフォンソ王子、フィル・クロネンバーグ司祭を加えて仮の政府とし、軍にはミハイルを置いて、国の内外を見張らせた。
「あなたは何をなさるのです?」
フィルに聞かれ、ハルキはにがっぽくわらった。
「もっぱら犬の世話よ。この国をふるえあがらせている猛犬じゃ。手がかかりそうじゃて」
犬を町に連れ出せ、と手下の山賊に命じた。