書初め
□書初め
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たまに目の覚まし方がわからなくなることがある。
これは夢だ、と思っても、どうやっても現実にもどれない。世界がおわらない。
だが、これはやはり現実だ。おれは縛られていた。
すっぱだかで、後ろ手に縛られ、足首もひとつにくくられている。
六畳ほどの和室にころがされ、尻穴の熱い疼きに喘いでいた。
(ん)
新しい畳の上でおれはオロチのように腰をくねらせた。
尻の中が熟しきり、甘みにただれるようだ。
肛門に何か塗られているのか。収縮するたびに、粘液が音をたてる。泡を噴き、熱いしずくが内腿をつたう。
――新年会。きみ、代わりに出てくれないか。
技術部の部長が、両手をあわせて頼み込んできた。
えらいさんの集まりで苦手なのだという。
――わたしのような新参者がいっても大丈夫なんですか。
――顔つなぎにちょうどいいだろ。社長もくる。
周防デジタルに入ってから、約一ヶ月。好機到来だとおもった。
社長に売り込めば、次世代ディスプレイ開発部門に移転できるかもしれない。報酬もあがる。
おれは喬任社長に近づいた。話しかけ、技術畑の最新情報を開陳し、愛想をふりまいた。
彼は興味深げにおれの話を聞いた。追い払わなかった。それどころか、去りぎわに耳元にささやいた。
――この後、残ってくれないか。頼みたいことがある。
香水のいいにおいがした。首筋に触れられたように、ドキリとした。おれは奇妙な不安と成功の予感にうわずり、シャンパンをあおった。
その後の記憶がない。