キスミー、キミー
□逃亡者
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第30話
ピートは翌日、ミッレペダに連絡を入れた。デイトン主従とともに、専用機で収容され、その足であわただしく大小の報告会に出た。
アルジェリア政府に異心ありの報せに、上層部は動揺した。すぐに情報班が派遣された。
ピートのほうでも、おどろくべきことを聞いた。
ヘリが引き返したのは、砂嵐のせいではなかった。
「えらい騒ぎだったのよ」
金髪の大男、レニーはめずらしくしぶい顔をしてみせた。
「パイロットが撃たれてな」
「タローが?」
レニーはその騒動を話した。
ピートとリコがヘリからこぼれ落ちた後、副操縦士がすぐに隊員たちの手錠を切ってまわった。
ソルが撃たれ、ピートが落ち、隊員たちは動揺していた。主操縦士のタローは当然、リコを追うものとヘリを降下させかけていた。
だが、作戦指揮官のフィルモアがそれを止めた。
ピートは死んだ、と言った。
「皆、逆上してな。たとえ死体でも置き去りにすることはできねえだろ。ましてや、今があのアクトーレスを撃つチャンスなんだから。タローもコクピットから見て、ふたりは生きているって言ったんだ」
すると、フィルモアは唯一残っていたM16をとり、威嚇射撃をした。
命令に違反する者は誰であれ撃つ、と言った。
「でも、タローはああいうやつだからよ。腰抜け、とかなんとか言っちまったんだよ。そしたら、バン、バン、だよ」