迷宮のキース
□迷宮のキース
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客の手がゆっくり尻を撫で回している。
指をするりと割れ目に沿わせ、尻穴の上をすべらせる。
おれは芝草をつかみ、ふるえていた。
――どうか、ものわかりのいい客でありますように。どうか。
客はついにおれを抱き取り、膝に抱えた。その手が内股を割り、ペニスを包む。じわりと股間に熱がひろがる。
おれは客の胸にすがった。マイクに集音されないよう小声で頼んだ。
「部屋に、連れてってください」
客は答えない。ペニスを包む手があやしく動いて尿道口をなぞっている。
亀頭が濡れてしまう。尻のなかが熱く膨れて脈打ちはじめる。
おれは恐れた。勃起したペニスをカメラが見ている。飼育員が見ている。
「どうか。部屋で」
だが、客は抱えたまま口づけてきた。口づけたまま、ペニスを握り、尿道口をゆるゆると撫でつづける。
ひどく敏感な部分を責められ、おれはたまらず腰をひねってしまった。
その反応がよけい客を面白がらせた。客はさらに爪をねじこもうと尿道口を責めた。
「ん――ンンッ――」
逃げようともがくが、爪のない指に力が入らない。客の腕が強く抱き、動きを封じた。これ以上は暴れられない。
おれはうろたえた。
(いやだ。広場ではやめて。見られてる! あとで叱られる!)
性欲よりも恐怖のほうがまさった。
おれは尿道口を責められながら、すすり泣いた。だめだ。また叱られる。また怒られる。