ジョーディの旅

□ジョーディの旅
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バスから降りると、ジョーディはいそいそと路肩に寄った。

ファスナーをおろし、ていねいにペニスをつまみだす。

放尿はひどく気持ちよかった。
頭から力が抜け、目玉がじんわりと落ち着く。

長い小便を終えると、彼は律儀にペニスを振った。ていねいにしまい、ファスナーをあげ、手もハンカチで拭いた。身じまいは完璧だ。

ここで『グッドボーイ』のひとことがあるべきだ。レモンアイスのごほうびが。

しかし、あの葉巻を咥えた大男はどこへ行ってしまったのだろう。
誇らしげな愛情いっぱいの黒い目は。

ジョーディは、地平までまっすぐ伸びたアスファルトの道を見つめた。




シカゴ――。
グリーンウッド神父は番地をたしかめ、古いアパートに入った。

警備室はあったが、警備員はいなかった。神父は誰にとがめられることもなく、エレベーターに乗ることができた。

エレベーターが上昇する間、神父は大柄な友人を思った。

ラロが電話に出ない。
仕事中、ではない。

彼は怪我をしている。それに、仕事中であろうと、用がなかろうと、うるさく電話をかけてくる男だ。
沈黙はよくない兆候だった。

神父はひとつのドアの前に立ち、ノックした。

「わたしだ。ラロ、開けてくれ」

沈黙は長かった。
神父は待ち続けた。友だちだ。待ってやらねばなるまい。

ラロは怪我をしている。大きなものをうしなって、ぼう然としている。あの愚かな男は、酒を飲む以外、おそらく何もできずにいるのだろう。

「ラロ。いるんだろう?」

グリーンウッド神父はもう一度、呼びかけた。

「話したくないならいい。でも、気がむいたら、教会に来なさい。電話でもいい」

そう言った時、鍵の開く気配がした。
ドアが開いた途端、異臭があふれ出た。
赤い目がぬっとのぞいた。

「やあ。ファーザー」

不精髭の中から、かすれた声が言った。

「どうぞ。散らかってるけど」
 




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