悪党クラブ
□第二部
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「なあ、今日、うさちゃんだろ」
食事の時間、アンソニーがさりげなく言った。
「今日、おれ、クマの日なんだ。替えない?」
うさちゃんはデミル、クマはグリフィス先生だ。今夜の割り当てだ。
アンソニーはデミル先生を可愛がっている。デミル先生だけを抱きたいのだが、グリフィス先生の権利も抜け目なく保有している。
こうして交換したいがためだ。
「ダメ」
おれは笑った。
「おれだって、たまにはあっちも味わいたい」
「いいじゃない。おまえはクマ好きなんだからさ」
おれとパパ・クラレンスとスタンはグリフィス先生の大きな尻が好きだ。男らしい体も、感じやすい乳首も気にいっている。
もっとも最近は、スタンは新しい恋人ができ、クラレンスはAレベルの試験勉強で忙しい。たまにしか抱かない。もっぱらおれがかわいがっていた。
といって、スコット・デミルがいらないというわけではないのだ。
「うさちゃんも好きさ。あの丸い尻も」
食堂の一段高い教師たちのテーブルを見やった。デミル先生は物憂く皿をかきまぜている。
「なあ、コンラッド」
めずらしくアンソニーが名前で呼んだ。気のせいかもしれないが、と言い、
「あいつ――おまえによろめいてるんじゃないか?」
おれは肉を噛みながら友人を見つめた。アンソニーはつまらなそうに芋をつつき、
「おまえにだけは目つきが違うような気がするんだよね。何かあるとすぐおまえの顔見るだろ」
「そりゃ見るさ」
おれは肉を飲み込み、
「おれはいい男だからな。抱き方もうまいし」
「人でなしなのに」
「小さい問題だ」
おれは笑って、アンソニーをなだめた。
「ただ顔色見てるだけさ。おれはきびしくあたるから。あと、おまえの趣味がイヤってのもあるかもしれんな」
アンソニーは、いいの、とふてくされた。
「おむつはおれの愛だ。おれはうさちゃんがかわいいんだ。彼のウンチも。邸において、おまえら野獣の手から守りたいぐらいだよ」
アンソニーの言葉は本音だ。
調教中からデミル先生を独占したがっていた。本当に自分だけのペットにしたいらしい。
だが、それをやれば仲間から総スカンを喰らってしまう。背信は伝わり、わが校のどのネットワークからも相手にされなくなるだろう。気まぐれな男だが、さすがにそれはできなかった。
(しかし)
アンソニーがやきもちを焼き始めたのは面倒くさいことだ。こじれるなら、デミルから離れたほうがいいかもしれない。
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