2月映画
□鬼が島
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(はやく。はやく出させてくれ)
おれは透明な椅子の上で、腹の痛みにのけぞっていた。産科のベッドのように足首を高くもちあげられ、大股びらきにされている。
便塊が出かかって、肛門をおしあげている。
だが、彼らは商談に夢中で、なかなかゴーサインを出さない。
「ああ、あ」
キリで突いたような痛みに、おれは思わず声をあげた。もうだめだ。
気づくとペニスの押さえがゆるんでいた。
小便が放物線をえがいて、飛び出ている。
彼らの巨大な顔がふりむく。
恥ずかしかった。ビーチボールほどもある巨大な目であっても、失禁している様をじっと見られるのはやりきれないものだ。
さらに恥辱は続く。
ついに肛門の制約が消え、はらわたが下がる。ふくれきった糞が争うように尻の穴からすり抜けていく。
「あ、ア」
粘膜を重いものがずるずるすべり落ちる。排泄の快感にゾクリと震えが走り、目玉が熱くゆるむ。
緊張が蒸気となってぬけていくようだ。腹のなかに空間ができ、あたたかくゆるんでいく。おれは思わず、また小便をもらした。
「ホウ」
彼らの巨大な顔がそれをみて、感嘆の声をあげる。隣の顔と角をあわせて、ひそひそつぶやく。
途端に恥ずかしさに顔が熱くなった。
(ちくしょう。デカブツのど変態どもが)
おれは鬼に囲まれていた。鬼。角を生やした巨人族。
彼らは大木のようにのしかかり、おれの排泄ショーを見物していた。
やや小さめの巨人が、いきなり手を出した。布団ほどもあるそれでおれのからだをわしづかみにした。
「ヒイッ」
からだが宙に浮き上がる。丸太のような指で締め付けられる。
腹を握り締められ、おれは悲鳴をあげた。
「や、やめてくれ!」
その巨人は子どもだった。おれを握り締め、ガラガラのように振ってはキャッキャと声をあげた。
おそろしかった。おれは泣き叫んだ。気づくと肛門から糞が飛び出ていた。内股を生暖かいもので汚れている。
「やめろ! ちくしょう、ぶっ殺すぞ。やめろ!」
おれは泣きながら、汚れた足をバタつかせた。
それが彼らにいたく気に入られたようだった。
おれはペットとして、その鬼の一家に飼われることになった。