ヨザックだと安心する話


急に背中に掛かった重みに振り返ると、見慣れた橙の髪が頬を掠めて触れた。

「ヨザ…?」

私の後ろに座った彼は背中を向けていたので、その広い背中にもたれると、仕返しとばかりに少しだけ押し返される。

「グリ江ちゃんおもーい」
「ちょっと。それ乙女に対して禁句よぉー」

それから二人で一緒に声をあげて笑った。一頻り笑ってから、膝を抱える。背中にふっと重みが無くなったので、離れた温もりを寂しく思いながら、彼を見上げようと振り返ると、背中に腕を回されて抱きしめられた。ぎゅうっと。だから私もそれに答えるように、彼の背中に腕を回した。

彼に抱きしめられると、まるで夕陽の暖かさに包まれるようでとても安心する。それを良く分かってる彼だから、時々こうして抱きしめてくれた。

「あー、やっぱり安心するなぁ」
「そうか?」
「うん」

にへらと笑うと頭を撫でられる。その骨張った大きな手にそうされるのが好き。

「オレは抑えがきかなくなりそうでハラハラだけどね」

そう言ってヨザックは困ったように笑う。ずっと困っていれば良いよ、なんて冗談で言ったら、彼は大袈裟にひどいと泣き真似をして、それから私の頬に顔を寄せてきた。囁き声はとても甘美な音で、

「悪い子」

頬っぺたにキス一つ落として、ニヤリと彼は口角を上げる。そんな馬鹿な人の顔を直視出来なくて、慌てて彼の胸に赤くなった顔を押し当てた。






でもやっぱり、安心するんだよなあ。


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