神メモ

□結婚するならクノールと
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「今日泊めさせて」

ヒモ野郎のヒロがそう言って私の家にやって来た。風俗嬢の子たちに飽きたらず、私の所までご飯をたかりに来たよ、この人。玄関で片手を上げて微笑んでいる彼に、ため息を吐いてから冷たい目をお見舞いしてあげる。

「残念だけど。貴方にあげるご飯も寝床も、ここには無いから他を当たって」
「別におれの寝る場所なんて用意しなくて良いよ。一緒に夜を過ごすんだから」
「帰れっ!」

何さらりと言っちゃってくれているんだこの人は。しかしこの男は諦めが悪く、私の手を取って手の甲に軽くキスを落とした。お陰様で顔に焼けるような熱がやって来る。平手打ちを食らわせたかったけど、しっかりと手を掴まれていたから出来なかった。

「ちょっとヒロ!」
「おれは君の作る料理が食べたいな」

そう言って笑う奴は絶対に引く気は無い。それに、私だって彼は好きか嫌いかと聞かれたら……好きだ。流石ヒモと言えるだろう、私はこの男が家に上がることを許可してしまった。だからと言って、ヒモのために必死に趣向を凝らして料理をするつもりは毛頭無い。炊飯器に入っていたご飯をよそってから、市販のコーンスープの粉末を沸かしたお湯で溶かしたらはい、出来上がり。インスタント万歳。

準備が出来たから、リビングでごろごろしていた彼を食卓につかせるため呼ぶ。湯気たつそれらを見て、ヒロは満足そうな顔をして

「なんかお嫁さんと旦那さんみたいだね」
「旦那なら働けニート」

今は奥さんも働いている人も多いよ、とほざく彼を近くに置いてある新聞(しかも朝刊)で殴りたい。というか、殴って良いよね。でもそれを堪えて、早く食べなさいと言う私は大人なものだ。うん、本当に。

「あ、やっぱり美味しい」

彼のご飯を食べて最初の一言はまずこれだった。まあ、別にそこは別に気に障らない。問題は

「今まで食べてきた女の子たちの中で一番美味しいよ」

それを聞いて、何も反応もする気も失せた。黙り込む私に彼はどうしたの?なんて言うから席を立って、ゴミ箱に向かう。目的の物を漁って取り、彼のほうを振り返って

「あー、そうですか……そんならクノールと結婚して来なさいっ!」


『味の素/クノール カップスープ コーンクリーム 8袋入』の箱を投げ付けた。

















これだからヒモ野郎は





クノールのスープ美味しいよね、って話

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