銀桂

□桂小太郎を中心に体操隊形に開け
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「んじゃ…たりーけど体育始めっぞー。」
真夏の炎天下の中、3Zの生徒達は最早砂漠と化したグラウンドに並ばされていた。
「先生ー、先生は国語教諭じゃないですか、体育の松平先生はどうされたんですか?」
新八が当たり前の質問をジャージ姿の銀八にぶつける。
「松平先生は娘がどうしたとかで休みだー、代わりに俺がクーラーのキンキンに効いた職員室でジャンプ読むかわりにこうしてお前らの指導してやってんだ、ありがたく思えー。」
「……はぁ。」
体育教諭、松平片栗虎は娘の栗子に異変があるたびに休みをとる。そのつど他の先生方が教鞭をとるわけだが、今日はたまたま銀八になったらしい。
「今日は二人三脚をやる。好きな奴と適当に組め。じゃあ体操やるぞー。」
『に…二人三脚!?』
誰もがフリーズした。
銀八は何事もないかのように言ってのけたが、二人三脚である。露出度が高い夏には肌の密着度がハンパない。しかも好きな奴と組めるときた。
皆の視線はある一点に注がれる。
その先には…
「おい、早く体操隊形に開け、先生が困っているだろう。」
実は学級委員長、桂小太郎の姿があった。
すらりとした細身の体型。指定の半袖に短パン。高い位置で一本に結ばれた髪。何より白い脚。あの脚に自らの足を結びつけ、更に肩を組み密着した状態で走るなんて…
『この上なき幸せ!!』

しかし一つ問題がある。
桂は無論一人しかいない。ということは…
『桂争奪戦じゃー!!』
皆の心に闘志がみなぎった。

「あのよ…桂…その…俺と…」
「なんだ、土方。はっきり言わんか。」
体操をしながら先ず桂に接近したのは土方であった。
「俺と二人さんきゃ「ロケットパーンチ」ぶはぁ!!」
「あ…すいやせん土方さん。手元が狂っちまった。」
「世の中にロケットパンチする体操あるかあぁああ!!」
ガミガミとうるさい土方を放っておいて沖田は話しを進める。
「桂ぁ、俺と二人三脚しやせんか?ピストルが鳴った瞬間に猛ダッシュしてお前のその綺麗な顔に傷つけてやらぁ。」
「…は?」
呆然とする桂。
その時。
「ほあちゃー!!」
「おっと」
間一髪で足蹴りをよける沖田。
「ヅラの顔に傷つけるなんて許さないアル!!」
攻撃の主は日光に弱いため木陰で見学していたはずの神楽であった。
「ふん。てめーとは決着つけとかねぇといけねーみてぇだなぁ…」
「望むところネ。」
「「うおりゃあぁああ!!」」
桂そっちのけで戦いを始めた二人であった。
と、それが合図だったのかワッと桂の周りに人だかりができる。
「桂!!俺と…「いや、私と!!「いや、おいどんと…「わっちと…「ПЖψφА…」
「桂さあぁああん!!僕とおぉおお!!」
新八も負けじと声を張り上げる。

「はいはいはい、しゅーりょー。」
桂を囲むようにできていた人だかりをかき分けながら銀八がやって来た。
「おめーら何してんの?」
「いや…その…桂さんと二人三脚を…」
新八が恥ずかしげにクラス代表として説明する。
「だからぁ、何無駄なことしてんの?」
「……は?」
唖然とする生徒達。
「ヅラは…」
ガシッと桂の肩を掴む。
「俺とやるから。」
「はあぁあああ!?」
真夏の桂争奪戦はこうして幕を閉じたのだった…
 

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