自己認識





随分長い間ここにいた気がする。
しかし時間という概念はよく分からない。判断すべきものがないからかもしれない。

おかしなことだらけだ。
どういう訳だか、私は存在している。今現在、喋っているし、息をしている。さらには、自己意識を表現し、愛されたいとさえ感じている。
そして、死に向かって着々と道を歩んでいる。

そんな中で、何故だか昨日、私は小鳥と出逢った。
私を認識し始めたのは、思えば小鳥と出逢ってからかもしれない。
小鳥とは私より小さな生き物で、美しく、か弱く、そして儚い。
小鳥は羽を広げて羽ばたくと、地面から離れてしまう。けれども私は、ちっとも離れられない。悔しくて、少し速く走ってみた。しかし飛べない。膝を曲げ、上へと力の移動を試みるも、やはり無理だった。
どうやら、小鳥にしかできないことらしい。とたんに、羨ましく思えた。
小鳥は歌も歌える。綺麗な声で鳴いてくれた。歌ならば歌えると、私も一緒になって歌った。
ひとりで歌うときにはできなかったのに、和音を奏でることができるようになった。とても楽しい。
口づけもできるようになった。ひとりでは、唇がひとつしかないから、できるか分からない日もあるけど、これからはいつでも口づけできる。


小鳥の認識によって、ようやっと私は自己認識に成功したらしかった。



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