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□偏食
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「アッイッスー、アッイッスー」
マスターは既に出掛けてしまい、特にする事が無く時間を持て余していた俺は、たまにはTVでも見てみるかとリビングへ向かった。
すると聞こえてきたのはいつもの陽気な声。
「……兄さん何やってんの?」
「あ、レン!!何って見ての通りだよ」
…ですよねー。
目の前の人物は、相変わらずの満面の笑顔でテーブルの上にせかせかと食器や食材を並べている。
兄さんはただアイスを食べるだけじゃなく、自分でオリジナルなアレンジを加えたりと流石はアイスマニア。
…にしても、今日はちょっと豪華すぎないか?
アレンジと云っても、いつもはフルーツをいくつか加えたり他のアイスを混ぜてみたりと云ったお手軽なものだ。
それなのに今日は何だか様子が違う。
いつもの蜜柑やバナナは勿論、見た事も無いような高価な果物。
そして色とりどりの可愛らしいトッピングの数々…
…どうしよう、嫌な予感がする。
「今日…って、何かあったっけ?何かすげー奮発してある気がするんだけど…」
心の中で何も無い事をひたすらに祈った。
だって…だって…
「んーん、別にそう云うのは無いよ」
よ、良かった!
……でもそれならどうして?
「マスターもレン達も、最近働きすぎだなって思っててさ。だからたまには俺からご褒美!!」
「ー…っ」
そんな事を笑顔で云う兄さんを、俺は直視出来ない。
……色んな意味を込めて。
「だから今日はー…ってレン?どうしたの?」
黙ったままで居ると、兄さんは少しだけ表情を曇らせながら小さく傾げる。
えぇと。
どうしよう、かな
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