マB

□れっつ めいくあっぷ
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以前の箱の一件(小麦粉爆弾)以来、アーダルベルトは警戒を怠らず、ピリピリしている。

しかし、その警戒心もジュリアの前では解いていて、イタズラ首謀者の彼女としては、次のイタズラを実行するのに都合がよかった。



「それでね、私がこのお菓子をアーダルベルトに食べさせて来るから、あなた達はアーダルベルトの顔に落書きしてきてほしいの」

「落書きって…この間オーディル様にして怒られたばかりじゃないですか」

「大丈夫よ。このお菓子には強烈な睡眠薬が入ってるし、さすがのアーダルベルトも起きないわよ」

「それ婚約者にしていい事じゃないでしょう」

「それに落書きしたって、ジュリア様には…」

「見えなくても雰囲気で感じるから大丈夫よ」



ジュリアと彼女の侍従達が話し合うなか、いつ自分に振られるのかとキーナンは冷や冷やしていた。(アーダルベルトはまた会議室へドナドナされていった)


小麦粉爆弾の件で、こってり絞られたため、正直もうジュリアのイタズラ大作戦には関わりたくないキーナンであったが、彼女に逆らう事ができず、彼もまたドナドナされてここにいる。



「でね、あなたはヒュエリットと一緒にやってきてもらえるかしら?」

「……了解しました」

「イエッサー!」

「コーネリアは、私と一緒にアーダルベルトを眠らせましょう!」

「かしこまりました」



羽ペンで顔面に落書きとか痛いのでは、という疑問も浮かんだが、他に書けるものもないので、その疑問は声に出される事はなかった。


会議が短時間で終わったアーダルベルトは、真っ先にジュリアのところへやって来た。


イタズラ用にと、ベッドのある客室を選んだジュリア。その微笑みからは、これから婚約者の顔面に落書きというイタズラを仕掛けようなどとは微塵も感じられない。




「おかえりなさい、アーダルベルト。早く終わったのね」

「今日はたいした議題もなかったからな」

「アーダルベルト、あなたにお菓子を作ってきたの」




小さめのバスケットに入った焼菓子(強烈な睡眠薬入り)にアーダルベルトはジュリアも食べるだけではなく作るほうにも興味がわいてきたのかと関心した。


ちなみに睡眠薬を調合したのはジュリアだが、菓子を作ったのはコーネリアである。



何も知らずに焼菓子を頬張るアーダルベルト。


微笑むジュリア。




そして、ベッドの下でスタンバイするヒュエリットとキーナン。



「(ジュリア様…!漢ヒュエリット、貴女のためにそこの顎割れを可愛いにゃんこにしてみせましょう!)」

「(ジュリア様の前では警戒心ないのか…やはり、ジュリア様はすごいお方だ)」



羽ペンをしっかり握りしめ、カーテンの中に潜んでいるコーネリアからの合図を待つ。




しばらくして、アーダルベルトの呂律が回らなくなり、彼は眠りに堕ちた。


コーネリアがジュリアと共に退室し、ヒュエリットが後片付けをし、キーナンがアーダルベルトをベッドまで引きずって移動



ここまでは計画通りだ。


あとは、アーダルベルトの顔面に落書きを施すのみ






コーネリアと退室したジュリアは、早くアーダルベルト起きないかしらとワクワクを隠しきれず、鼻歌を歌いながら、軽くスキップしたりしてコーネリアを驚かせていた。



「お嬢、危ないです!」

「平気よ、このくらい♪」

「あわわ…!」



ジュリア達が作戦会議室(客室)に戻って来てすぐに、満足げなヒュエリットと疲労感たっぷりなキーナンが帰って来た。


どうやら作戦は成功したようだ。


あとはアーダルベルトが落書きに気づいてくれれば、大成功だ。



しかし、鏡を見なければ、自分の顔は見えない。



案の定、起きたアーダルベルトは気付かずに、落書きされた顔のまま稽古食事執務をこなしていく。



作戦に加わってない部下や侍女達は笑いを堪えるのに必死で仕事が手につかない。


ジュリア達の作戦を黙認していた侍従長は、見かねてアーダルベルトに鏡を見るように言うが、そんな暇はないと一蹴されてしまう。



「もう!アーダルベルト鈍感すぎるわ!」

「どうしましょう」

「困ったね」



作戦練り直しか?と思ったその時、アーダルベルトがジュリアに会いに来た。落書きされた顔で。



アーダルベルトの顔を見た途端、噴き出したヒュエリットの口を押さえつけるキーナンはアーダルベルトを直視しないように彼の腕を見た。コーネリアは笑いを堪えながら、噴き出しそうになるのを耐え続けている。


ジュリアはにこにこ笑顔のままだ。


先程から笑われていたのは自分だと確信したアーダルベルトは、侍従長に言われた通り、ジュリアから借りた手鏡で自らの顔を見た



「なっ、なんだこれは?!」



笑いを堪えきれなくなったヒュエリットが、盛大に噴き出し、コーネリアも釣られて大笑いだ。


だが、笑って終わるはずもなく、ジュリアが笑顔で微ネタバレ(自分が計画したとは言わない)したおかげで修羅場と化し、笑いは一瞬にして謝罪と泣きへと変わったのであった。



「ふふふ、次はどうしようかしら」



魔女の囁きは、またもや誰の耳にも入らなかった。








あとがき

顎ジュリ?
アー様がジュリアの計画したイタズラにひっかかるシリーズ第二彈。

可愛いにゃんこをひたすら書きなぐり、カオスな顔面に仕立て上げたヒュエリットの画力は三男と同じレベル設定です(笑)

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