マB

□箱の中身はお楽しみ
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フォングランツの次期跡取りであるアーダルベルトは、父親の代わりに会議に出席することもある。


今日も会議があるといって、引きずられるように会議室へ消えていったばかり

遊びに来たジュリアは笑顔で手を振ったあと、中庭の彫刻像のところに座った



「(せっかく遊びに来たのに。アーダルベルト忙しそうだったわ……そうだわ!良いこと思いついちゃった!)」



すっと立ち上がり、スタスタと歩く姿からは、彼女が盲目だなんて思えない。


侍女達から空き箱やいらなくなったものをもらい、何かを作り始めたジュリア。


その様子を扉の隙間から窺っているのは、アーダルベルトの命令に従わざるを得なかったキーナンとジュリアの侍従数名。



「あんたも大変だね、アーダルベルト殿にジュリア様の様子を見て来るように言われたのだろう?」

「会議室に入られる前に」

「見てた見てた。アーダルベルト殿も過保護だなー…ジュリア様はお一人でも大丈夫だとおっしゃってるのに」

「なら何故ここに…?」

「「心配だからに決まってるだろう」」 

「……」



扉の外で話す侍従達の声はジュリアの耳にしっかりと入っていた。

しかしジュリアはその会話を聞きながらくすくす笑って、空き箱の中に何かを入れている。



「ふふっ、できたわ。ねぇ、コーネリア。いるんでしょう?手伝ってもらえるかしら」

「かしこまりました!」



コーネリアと呼ばれた侍従は勢いよく扉を開けた。同じく扉に寄り掛かっていたもう一人の侍従は開かれた扉に対応できず、転んでしまった。


派手に転んだ侍従に同情しながら肩を貸すキーナンは目が見えないはずのジュリアがこちらを見ていることに気付き、一瞬動揺し、侍従から手を放してしまった。

彼女は目が見えなくても、勘と気配を頼りに、そこにいると感じとっているようだ。



「ぎゃっ」

「あ、」

「いきなり放すやつがあるか!」

「すまない…」

「ヒュエリット?どうしたの?」

「い、いえ!このアンポンタンが何も言わずに放したので…大丈夫です!この通りぴんぴんしてますから」

「ふふふ、ヒュエリット無茶しないでちょうだいね」



ジュリアは再び箱に向かい合い、コーネリアの手を借りながらラッピングを施していく。

可愛らしい桃色の包み紙と赤色のリボンに包まれた箱の中身はジュリアしか知らない。



「まだ会議は終わってないようね」

「分かるのですか」

「考えればすぐに分かるわ。ねぇ、コーネリア、ヒュエリット」

「申し訳ありません。私には分かりかねます」

「オレ分かります。あれですね、ジュリア様の勘…」

「二人共違うわ。答えは、あなたよ」

「…私、ですか…?」



いきなり話を振られたキーナンは焦った。



「だって、あなたが暇になる時って、アーダルベルトが会議中か私と会っている時くらいでしょう?」

「そう、ですね」

「だからアーダルベルトはまだ会議が終わってないのよ」



会議が終わればアーダルベルトはジュリアのところにすっ飛んで来る。

そして二人っきりに…。それがいつものパターンだ。



「そこでね。私、面白い事思いついちゃったの」

「またですか」

「ジュリア様、この間キアスン様に注意されたばかりでしょう」

「ええ。だから今日はアーダルベルトにね。どうせなら、あの人に近いあなたにも協力してもらえると嬉しいんだけど…」

「私にできる事でしたら何でも」

「ありがとう!じゃあ、早速で悪いんだけど…この箱をアーダルベルトがよく使う場所に置いてきてもらえるかしら」

「何も書かずに、このままでよろしいのですか?」

「ええ。」



真っ白な箱を手渡されたキーナンは、ジュリアに言われた通りにアーダルベルトがよく使用する…というか毎日使う場所に置きに行った。


残ったジュリアの侍従は、箱の中身が気になって気になってしょうがない。

婚約者同士のやり取りに口を挟むつもりはないが、似たような事が数日前にもあったため、気になっている。



「ジュリア様」

「なぁに?」

「あの箱には一体何が入っているのです?」

「うふふ、内緒♪」



数十分後、逃げるように駆け込んで来たキーナンとそれを追って来た何故か小麦粉だらけのアーダルベルトに、顔をひきつらせながら必死に謝るヒュエリットとコーネリアの姿があったとか…


ジュリアは笑顔で『大成功♪』と呟いたが、誰も聞いてはいなかった。






あとがき

顎ジュリ…?なんというか、ジュリアがアーダルベルトにイタズラを仕掛けるだけの話でした(^-^;

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