マB

□視線の先には
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チラ チラ チラ


先程からチラチラとガタイの良い男を見ているキーナンにアーダルベルトは疑問を浮かべていた。

このチラ見は今日に始まったことではない。ここ2、3日前から男を見ている

気になるなら声をかけたらどうだ?と提案してみたが、見ているだけだからと丁重に断られてしまった。


見られている男は鈍感なのか視線に気付かずに仲間と和気あいあいに話をしている。



「キーナン…見ているだけじゃ何も伝わらないぞ」

「伝える事は何もないです」

「じゃあ何でチラ見してんだ?」

「そうですね…あえて言うなら……凄い筋肉だな、と」



この時アーダルベルトは自らの身体と男の身体を見比べた。だが、男よりアーダルベルトのほうがマッチョだ。

いつも傍に凄い筋肉マッチョがいるのにも関わらず、それよりもややマッチョを凄いというキーナンの心理がわからないアーダルベルトは更に疑問を浮かべた



「奴のどの辺が凄いと思ったんだ」

「どの辺………アキレス腱」

「見えねぇのにお前には見えてんのか」

「ではなくて、大殿筋…」

「ケツの筋をどうやって見た」

「あ…背筋だったと」

「お前…奴の筋肉に興味持ってないだろ」



ギクッとキーナンの表情がほんの少し変化したのをアーダルベルトは見逃さなかった。

どうやら見ていたのは男の筋肉ではなく、やはり男自身だったようだ。

図星をつかれてしまったキーナンは男を見ている理由を悟られたくないのかアーダルベルトと距離を置き、目も合わせなくした。


あまりにも子供っぽい対処をしたので、アーダルベルトは思わず噴き出してしまった。



「…ったく、そっちがその気ならオレにも考えがある」



アーダルベルトがとった行動は、とにかく距離を狭める。離れては追いかけ離れては追いかけ…

いつしか壮絶な鬼ごっこが繰り広げられていたが、アーダルベルトの策略で、すぐに終わった。



「もう逃げも隠れもしない事だな」

「……」



追い詰められたキーナンは、むっとふてくされている雰囲気を出しながら、男のほうをまだチラチラ見ている。



「奴の事が好きなんだろう?」

「いいえ、そのような感情は持ってません」

「…?じゃあ何で見てるんだ」

「それは……」

「話してみろ」




それは3日前の事――。


砦の柵が老朽化しているとの話を聞いたキーナンは隣接している森へ新しい柵を作るための木を選別しに来ていた。

比較的若い木を探していたところに、あの男が狩りをしていたのを見かけたので、この森に詳しいだろうと思って声をかけようとしたら



『3匹目ーー!』



と、男が叫んだ後、槍がキーナンのいるほうに飛んできたのだという。


間一髪で避けたものの束の間、男の『チッ 逃すか!』との発言後、石やら刃物やら飛んできて、これはやばいと感じ、森の入り口まで逃げ切ったと思ったら、今度は男が張った罠にかかり宙ぶらりんになった。

縄を切って地面に降りた時、男がやってきて『逃がしてんじゃねーよ!オマエ使えないな!新しい罠張っとけよ!』と言って去っていった。


男の勘違いにより殺されかけたキーナンは、男に仕返ししてやろうと機会をうかがっていたのだ。



「チラ見の理由は奴が完全に1人になるのを見てた…という事で間違いないな?」

「はい」

「3日前傷だらけで帰って来た原因はこれだったのか」

「完封なきまでに復讐するつもりです」

「そ、そうか」



その時、男が狩りの道具を持って1人で森へ入っていくのが見えた。

それを確認したキーナンは、ふっと鼻で笑った後、小屋に戻っていった。



「見届けないのか?」

「必要ありません。」



数分後、森から断末魔が聞こえ、それを聞いたアーダルベルトはキーナンの表情を見てゾッとした。



「(こりゃ誰もこいつには逆らえない訳だ。オレも気を付けねぇとな)」



どんな表情だったかって?


それは末恐ろしい、恐い人も怯む表情です。








おまけ


「なぁキーナン。お前の中で1番の筋肉が凄い奴って誰だ?」

「それはアーダルベルト様しかおられませんよ」

「そ、そうか(照」

「あえて箇所を言うなら…大腿四頭筋ですね」

「そうか大腿四頭筋………ん?いつ見たんだ?」

「後片付け行って来ます」

「おい!待て!いつ見た!?」





あとがき

筋肉の名前は調べたので多分あってます

仕返しを受けた彼は無事ですが無傷ではないです(笑)
こうして一人また一人と逆らえない人々が増えていくのだろうなー…

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