マB

□お願い!
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「キーナン、抱っこさせろ」



また、変な事を言い出した。

何にかに触発されて、自分にもできると確信してこの台詞だ。

純粋すぎるのもどうかと思う今日この頃



「嫌です」

「何故!?」

「メシ食ってますし」



朝の焼きたての目玉焼きをフォークでつつきながら言う。

それに、他にも人間はいる。何人かは顔を赤らめて、こちらに期待の眼差しを向けてくる。



「ぐうぅ…わかった。」


――――――――――――――


「キーナン、高い高いさせてくれ!」

「この間聞いたお願いなので嫌です」

「肩車はどうだ?」

「ぎっくり腰になる覚悟があられるなら」

「ぐ……おんぶさせ「嫌です」…ぐぬぅ」



食後のお茶を飲みながら淡々と応えるキーナンと挫けずにお願いを聞いてもらおうとめげないアーダルベルト。


こんなやり取りが5年1度見られるのだから人生は面白い。



「せめて手を繋いでくれ」

「何故貴方と繋ぐ必要があるんです?」

「オレが繋ぎたいからだ。お前と繋がりたい」

「私は繋がりたくないです」



冷たい。と嘆く姿を見た他の人々は慰めるように次々とアーダルベルトの肩に手を置いてから部屋を出ていく



―――――――――――――


「キーナン、一緒に寝ようぜ」

「嫌です。一人で寝ます」

「遠慮するな」

「してません」

「……」

「……」

「…子守唄うたってやろ」

「結構です。おやすみなさい」



パタン、と強引に締め出された。そのあと鍵のかかる音も聞こえ、アーダルベルトは「何故だ?」とぶつぶつ自問しながら自室へ消えていった。


その数時間後…


水を飲みに起きてきたキーナンの背後にアーダルベルト現る。



「…今度は何ですか?」

「オレに抱かれろ」

「嫌です」

「じゃあせめて姫さん抱っこだけでもっ…ぐは」

「絶対に嫌です。いい加減にしないと殴りますよ、石で。」

「もう殴ってんじゃ……石!?」



一瞬アーダルベルトに向けられた殺気は本物であったという




翌朝、昨日の5年に1度のなにかは嘘だったかのようにアーダルベルトはいつもの男前に戻っていた。

気になって問いかけてみても無自覚のようで、知らないとしか答えてくれないが、知らないわけではなく…



「…あいつら誤魔化すのめんどくせぇな」

「ありのままを話せばいいじゃないですか」

「できるわけないだろ!あぁ、昨日のオレをなかった事にしたい…」

「欲求不満な変態みたいでしたし」

「言うなぁ!////お前だって昔駄々こねてたじゃねーか!」

「知りませんね。誰かと勘違いされてません?」

「オレの記憶にはしっかりと刻まれてんだよ」

「…ではちょっと叩いて忘れてみましょう」

「手に持ってるそれは何…ぎゃああああ」




5年に1度、病とまではいかないけれどグランツ領に住むまたは住んでいた魔族にしか発症しない不思議な不思議ななにか


もし、グランツ地方に出向かれる際はお気をつけくださいませ




あとがき

変態アー様やりたかっただけのイミフ小話。

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