銀月 パラレル

□眠り姫の憂鬱
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ひや、と何か冷たいものが額に押し当てられた。
乾いてはいるがどこか暖かく、どうやら人の手のようだ。熱冷えシートのような人工的な冷たさではない。

(母上…か?)

だが母の手はもっと柔らかく、もっと小さかったような気がする。
するとその手は額からそっと下り、月詠の傷跡を撫でた。
ゆっくり、慈しむように。そして愛しくて仕方ないと言いたげに何度も頬を撫ぜる。

(…誰じゃ?父上か?)

眠いのに、と少々むずかってそちらに背を向けた。自分を溺愛している父ならやりかねない、と思うが、今日は深夜まで仕事と言っていたような…

(では、今、何時なんじゃ……)

そこまで思考したらぷっつり意識が途切れた。また深い闇の中へ意識が誘われていく。



ふう、と深い息を吐いてまた眠ってしまった月詠。
それを見て満足そうに笑った。
いつもの意地悪い狡猾そうな笑顔ではなく、心から愛していると言いたげな、優しい笑顔だった。
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