銀月 パラレル
□眠り姫の憂鬱
2ページ/3ページ
ひや、と何か冷たいものが額に押し当てられた。
乾いてはいるがどこか暖かく、どうやら人の手のようだ。熱冷えシートのような人工的な冷たさではない。
(母上…か?)
だが母の手はもっと柔らかく、もっと小さかったような気がする。
するとその手は額からそっと下り、月詠の傷跡を撫でた。
ゆっくり、慈しむように。そして愛しくて仕方ないと言いたげに何度も頬を撫ぜる。
(…誰じゃ?父上か?)
眠いのに、と少々むずかってそちらに背を向けた。自分を溺愛している父ならやりかねない、と思うが、今日は深夜まで仕事と言っていたような…
(では、今、何時なんじゃ……)
そこまで思考したらぷっつり意識が途切れた。また深い闇の中へ意識が誘われていく。
ふう、と深い息を吐いてまた眠ってしまった月詠。
それを見て満足そうに笑った。
いつもの意地悪い狡猾そうな笑顔ではなく、心から愛していると言いたげな、優しい笑顔だった。