君の幸せ俺の幸せ

□第五話
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外では大きな雨の音が響いていた。


スクアーロは外へ出かけたまま、帰ってこない。
また一人で修行でもしているのだろうか?


そんなことを思っている矢先、部屋のドアが開いた。



「チッ」

舌打ちをする彼は雨に打たれどぼどぼである。


「スッ、スクアーロ!着替えなきゃ風邪ひいちゃう!」

「だから何だ」

差し出したオレの腕を振り払い、鋭い瞳でこちらを睨む。
そしてさほど気にもしなかったように、備えつけのシャワールームへと向かった。


「危ない!」

ドアを開こうと身体をかがめた瞬間、ふらりとよろけた。
俺が急いで抱きとめ、前髪をまくりあげると、そっと触れる。

雨でぬれていたように思えた身体も、どうやら汗でも濡れているらしい。
自分の手のひらより熱い彼女の体にぞっとした。


「スクアーロ。熱出てるじゃん!」

「煩ぇ、触んじゃねぇ!」

「ダメだよ!早く体拭かなきゃ!」


オレは近くにあったタオルを取った。


「スクアーロ、脱がすよ」

「っ!触んな!」


逃げようとするスクアーロを無理矢理引き止め、制服のボタンを外す。
一つ、また一つと肌の色が露わになっていく。



「えっ……」

それがある一定部分まで達した瞬間、さあああっと血の気が引いた。
頭の中が一瞬で真っ白になった。



「っ……」

小さく声を漏らし、俯くスクアーロ。

そのスクアーロには胸があった。
体に合わない大きな胸を押さえつけるサラシ。

そこにあらわれる、くっきりとした谷間。


「ごっ、ごめん!」

オレはとっさに謝った。
何が何だかよくわからなくても、とにかく謝らなきゃって思った。


「おっ、女の子だったなんて……」

オレは必死になって目を隠した。
今オレは、茹蛸(ゆでだこ)みたいに真っ赤だっただろう。


「煩ぇ。しょせんこのナリだから、男に見えんのは当たり前だ」


スクアーロは先ほど渡したタオルでバッと胸元を覆い隠した。


「誰にも言うんじゃねぇぞぉ」


スクアーロはそう言うと、もう一度オレを睨んでシャワールームへと向かう。


オレは少しの間、何もすることができなかった。
ただただ、頭に残っているのは恥ずかしそうに俯く、スクアーロの顔だけだった。

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