GX

□部活帰りの君と僕。
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暑い。何が暑いって、ほら日差しとか、気温とか、何かとさ。

たった今、部活が終わった。体操服を乱暴に鞄に詰め込み、クシャクシャのカッターシャツに手を通し、ベルトの付きっぱなしの学生ズボンに足を通す。

「やっべ!もう六時すぎてっし!」

時計を確認すると時刻は六時をまわったところだった。
ボロボロのスポーツバックを肩にかけ、自転車にまたがると、自転車のハンドルが太陽の日差しでギンギンに熱されていた。

「あっち!やけどするって……」

真っ赤になった手のひらに、ふーふーと軽い息をあてる。まぁ、特に意味は無いのだけれども。

やけどしないように、指先でハンドルを摘まみながらサドルにまたがる。しかし暑い。このまま熱されて、溶けてしまいそうだ。


「っと、あれ?先、帰んなかったっけ?」


自転車をこいですぐ。校門の前に立つ、漆黒を見つけた。
ツンツンした黒髪に、夏だというのに学ラン姿。あぁ、熱い。見てるだけで、暑苦しいよ、万丈目。

「さっき廊下ですれ違ったところだろう」

「あれ?そうだっけ?」

腕を組み、学校を出てすぐの鉄柵に背を預ける。学ランの首元をパタパタと右手であおぐ姿に、どうして脱がないのか疑問が沸くばかりだ。

「アホか貴様は。暑さで頭までおかしくなったか」

すまん、元からだったな。と後から嫌味まで付けたされた。
むぅ……。そりゃあ、優等生のお前に比べれば、オレなんて下の下ですよーっだ!


「じゃあ、どうしたんだ?誰か待ってるのか?」

「あぁ。いつもは兄さんが迎えに来てくれるのだが、今日は遅いなと」


万丈目の言葉が途切れる。
理由は、左腕に抱えられた学生鞄から鳴るバイブ音だった。


「お、電話か?」

「いや、メールだ」


折り畳み式の黒い携帯を鞄から取り出すと、親指で押し上げ開いて見せる。
誰でもするような仕草なのに、彼がするとちょっぴり大人っぽく見えた。


「何々?女子?万丈目モテそうだもんなー」

「そ、そんなわけないだろう!兄さんからだ」


メールの文章に一通り目を通すと、一瞬悲しそうな表情をしてから携帯を閉じる。
あー。確か万丈目の兄さんってすんげー偉い人なんだよな……。

大方、メールの内容の予想は付いていた。だって万丈目があんな悲しい顔すんのって、家族のことか、クラスメイトの明日香のことくらいしかねぇもん。

「迎え、来れないって?」

「あぁ。まぁ、そんなところだ」

鞄に電話を片付けながら、寂しそうな顔で頷く。
そんな万丈目の髪を、今までまったく吹かなかった風がそっと撫でた。

「なぁ、万丈目!」

背中の鞄を自転車カゴに乗せ、ペダルを踏む。


「オレがおくってやるよ!」


万丈目の返事なんて聞かず、背中を押して無理矢理荷台に座らせる。
鞄をはぎ取り、スポーツバックの上に乗せると、思いっきりペダルを踏んだ。

「お、おい!十代!貴様、何を!」

「ちゃんと掴まってねぇと落ちるぜ!」

出発と同時に腹にまわされる万丈目の手。
何だかんだで、ついて来てんじゃん。


「じ、十代!一応、礼は言っておく……」

「ん?悪ぃ。風の音で聞こえなかった」

「な、なんでもない!」


あぁ、暑い。ハンドルを持つ手が冷たく感じるくらいだ。

あぁ、熱い。二人とも、顔がとっても真っ赤じゃないか。


end


万丈目さん誕生日おめでとうございます。
まったく、誕生日関係ない小説になってしまいましたが……。

二人乗り、書きたかったので、書けてよかったです。


 

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