GX

□GoodMorning
1ページ/1ページ


カーテンの隙間から差し込む、まばゆい光。
朝の訪れを告げる、大音量の目覚まし時計。

毛布にくるまり、それをかぶったまま、時計の在り処を探る。けれどそれはどこにもなく、オレの手はただただ空中を掴むだけだった。
仕方なく毛布から這い出、床に落ちていた目覚ましを止める。
昨日は、頭の上に置いてあったはずなのに、いったい誰が落っことしたんだ。先ほどまで眠っていたベッドに視線を落とせば、トロンとした目をこする、十代の姿があった。

そういえば、昨日突然帰ってきたんだったな。オレの住むマンションに、兄さんたち以外が訪ねてくる由も無かったものだから、扉の前に立ちよっ、と手を振るコイツを見たとき無性に腹が立って一度ドアを閉めた事を鮮明に覚えている。
その後、あまりにもうるさいものだから、仕方なく部屋に引きずりこんだが。


「万丈目ぇ、もう、朝ぁ?」

「朝だ。貴様は寝ていても構わん」


きょとんと大きな瞳を瞬かせ、オレの背を見つめる。大きな伸びをするように、腰の辺りを掴むと、そのままベッドの中へと引き込まれた。


「な、何を!」

「まだ、行くなよ」


ふっと耳たぶの後ろに息を吹きかけられる。程よく筋肉の付いた腕が身体を掴んで放さない。
ペロリと耳たぶを舐める音。ぴちゃぴちゃと鼓膜のすぐそばで鳴るその音が、オレの温度を熱くする。


「あっ、じゅ、じゅうだぁい。まっ、待てぇ!」


自分でもビックリするくらいに、甘く上擦った声が喉の奥から飛び出た。コイツのせいで色んなところが敏感にでもなってしまったのだろうか。
オレの声色を聞いてイイ気になったのか、ちゅっちゅっと頬に唇に、色んなところにキスの雨を降らせる。
たまにちゅうっと吸い上げられ、肌に赤い華が咲く。それでも気持ちいとか思っちゃうわけだから、オレは心底この男に甘いと思う。


「好きだ。ずっと、ずっと。だからさ、今日くらい、仕事休めよ」


頭の中はくらくら。身体はふらふら。十代が何を言っているのかさえ聞き取れなかったが、サイドテーブルに置かれたスケジュール帳が目にとまり、オレは勢いよく十代を引きはがした。


「き、貴様!仕事に遅れたらどうするつもりだ!」


急いで寝間着を脱ぎ散らかすと、ノース校からの相棒である制服に手を通す。バタバタと猛スピードでリビングを駆け巡り、洗面所で髪を整えると、ディスクとデッキを鞄に詰め込み、十代の馬鹿野郎!とだけ声をかけると玄関を飛び出した。


マンションの前では、黒光りした高級車が出迎える。荒い息を吐きながら車に乗り込むと、マネージャがそっと告げ口をした。


「サンダーさん。今日はメイク必要ですか?」

「いらん。第一、何故オレがそんな事を?」

「何故って、ファン、減りますよ」


くすくすと笑って指を差されるのは、首元に咲いた真っ赤な華。


end



甘くなってたらいいな。


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ