GX

□Pluto
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夢を見た。
君が、いなくなる夢。
幾千年もの遥か昔から、ずっと一緒だったのに。
君もそんな風に、いなくなってしまうのだろうか?


「うるさいぞ貴様!夜中に寝言を話すな!オレが眠れん!」


ばっ、と毛布をはぎ取られ、急に寒さが襲う。
あぁ、本当に夢だったのか。
君は目の前にいる。


「何故、泣くんだ?わけが分からんぞ」


首をかしげ、不思議そうにオレの瞳を覗き込んで。
涙ぐんだ自分の目から見るお前の顔が、滲んで見えて、夢の中のように消えちゃうんじゃないかって。

また、いくつもの不安が重なって、涙の粒は量を増して。


「ちゃんと、泣きやまんか!これではまるで、オレ様が泣かしたみたいじゃないか!」


君は、乱暴に袖で涙を拭う。
やっと洗濯したんだ。
醤油の臭い消えてる。

けれど、また。
それが不安で。

目の前にいるのに、どこにも行ったりなんてしないのに。
そうやって、洗濯なんてするから。オレの好きな君の匂いが消えてしまった。

背中に手を回して、胸元に顔を埋めて。
君がどこにも行ってしまわないように、思いっきり、キツクキツク抱きしめる。


「オレの服で顔を拭くんじゃない!貴様の涙で汚れるだろう!」


オレの涙より、醤油のほうが汚いもんって。
駄々をこねる子供みたいに、震えた声で呟く。
折れそうなほどに細い腰が、仄かに薫るシャンプーの香りが。
今、君がここにいることを証明してくれる。


「まんじょーめぇ。どこにも、行くなよなぁ」

「さんだ。オレがどこに行く必要があるんだ。貴様とは腐れ縁だろう」

「じゃあ、約束のちゅーして」

「なっ、ななななっ!それとこれとは話が別だ!」

「ならおれ、ずっと泣くぜ。みんなが起きちまうくらいに、ずっと、ずっと」


君の沈黙が、またオレの涙を誘う。
コブラが言ってた、デスベルト。
君が、いつ死んじゃうか分からないって聞いて、皆いつ死んじゃうか分かんないって聞いて。
不安で、不安でたまらない。
オレだけ一人、取り残されてしまうような気がして。


「目、つぶってやがれ……」


オレの瞳の雫を掬い、震える唇で、ほんの少しの柔らかなキス。
静かに目を開けば、真っ赤になって俯く君の姿。


「ありがとう」

「もう、二度と泣くな。貴様に、泣き顔は似合わん」

「そう、かもな……」

「ずっと、笑ってろ。それでいい」


君の手をそっと引いて、一緒に毛布をかぶる。
とても、とても、温かい。太陽の当たらない自分でも、こうすればすごく温かい。

君はいなくなったんじゃない。
オレと二人で一つになったんだ。
二度と、離れない、君の名前を、忘れたりなんかしない。


「今日、だけだからな」

「それで、十分」

end


冥王星(十代さん)と海王星(サンダーさん)のお話。
三期の不安定な十代さんが、あまりも悲しいので少しは安心できたらいいなと。
そんな意味不明なお話。


 

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