GX

□rouge
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万丈目とお付き合いという形をとるようになって、今日で約五ヶ月。
海岸でデートもした、手もつないだ、一緒にお風呂入る時もあるし(寮だから当たり前かもしれないけど)、毎日寝起きから就寝まで一緒だというのに……。

まだ、キスをしたことが無いのだ。

そりゃあ、オレも男だし、思春期真っただ中の時期だし、興味はある。
ただ、向こうの反応が気になるのだ。

もし、泣かせてしまったらどうしようとか。
もし、嫌われてしまったらどうしようとか。

あれ?オレってこんなにネガティブだったっけな。
大切だから、大好きだから、こんな気持ちになれるんだと思う。
けど、まあなんと言うか……。


ただ、やっぱりキスがしたい。


人間、欲望に鈍感になることはよくない。
うん。やっぱり自分も生粋の人間なのだから。

男、遊城十代。今宵、彼の唇を頂きます!


そう、心で粋がって早三日。結局自分は動けずにいた。
第一、オレの方が身長が低いというのに、どう手を出せばいいんだ。
あれか!オレが女子みたいに背伸びしてすればいいのか!
どう考えたって恥ずかしすぎる。いや、恥じらいというものは、オレには本来あって無いようなものだけど……。


「それもこれも、万丈目君次第ッスね」

「だろ?オレがあれこれ考えても仕方ないんだよなぁ」


かぽーんという擬音が似合いそうもない、森の中に無理矢理開発されたような露店風呂。
オレの良き相談相手、丸藤翔は華奢な身体を丸めながらノロケとも似つかないそんな話に耳を傾けてくれていた。


「万丈目君の顔が兄貴よりも下がってるときがチャンスッス。無理矢理奪っちゃえば、こっちのもんッスよ!」

「そうは言われてもなぁ……」


そりゃあ、無理矢理にでも唇を奪うことができたら、一番ラクなんだろうけど……。
今までキスどころか、異性にさえ興味を示さなかった(万丈目は同性だけど)オレにとって、それはあまりにも難しいことだった。


「兄貴が考え事するなんて、兄貴らしくないッスね。なんかもう、ドーンとぶつかっていっちゃいそうな感じなのに」

「うぅー。だってぇ」

「いつもの兄貴らしく、行動あるのみでいいんじゃないかな?」

「そうか!そうだよな!」

「うんうん。ってえ゛ぇ!兄貴、切り替え早っ!」

「こんなに考えるなんて、オレらしくねぇ!先あがるぜ、翔!」


腰にタオルを巻き、脱衣所まで一目散に駆け出す。後ろで、まってよ兄貴ーと翔の声が聞こえた。
ごめんな、翔。
翔のお陰で、オレに考えることなんて似合わないって分かったら、もう無我夢中でアイツのところに向かう以外に無くなってさ。
また、借りはそのうち返す……はずだからさ。

DA専用のジャージに着替え、簡易型の洗濯機に制服とタオルをまとめて入れ、スイッチを入れる。
乾いたら翔が持ってきてくれるだろうと、心の中でまた翔に頼みながら。

足は猛スピードで進む。
脱衣所を飛び出し、少しぬかるむ森の中を木々を横目にレッド寮まで。
なんだ、やっぱり自分は自分なんじゃないか。次の万丈目の反応が楽しみで楽しみで仕方がない。

あぁ、またからかってやろう。


「ただいま、万丈目」


自室の扉を開ければ、床に座り込み、カードを整理する彼の姿。
オレが近付くとゆっくりと顔が上がっていく。


「なぁ、万丈目。キス、しようか」


end



サンダーさんは、おもしろい反応をしてくれると思います。


 

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