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□きっと夢中にさせるから
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レッド寮の食堂で、茶碗を片手に白米を頬張る。
やはり、日本人の朝はご飯に限るな。
と、今はそんな場合じゃない。
なんたって今日は、テレビの星占いで自分の星座が一位だったのだから。
今のオレには運がついてるに決まっている!
今日は、今日こそは天上院君にこの想いを伝えるんだ!
「一回玉砕してるくせに、まだ言うんッスか?」
「しょっ、翔!貴様、何故オレの心の声が!」
「口に出てたよ。まったくもう、万丈目君ってば報われないこと分かっててやってるなんて、相当のドMッスね」
「しょぉお!貴様、そこになおれ!もういっぺん、この万丈目サンダー様の恐ろしさを叩きこんでやる!」
「わー。あにきー、さんだーがいぢめるー」
「馬鹿にしているだろう!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てると、十代が苦笑いをしながら仲介に回る。
前言撤回。
今日は運なんてついてなさそうだ。
「万丈目もすぐに買うなよなぁ」
「うるさい!貴様に関係なんぞあるか!」
目の前で深いため息をつき、おもしろくなさそうにオレを見つめる十代の視線から逃れるようにして、唇を尖らせる。
横目で辺りを見渡せば、べーっと舌を出し、あからさまにオレを挑発する翔の姿が見えた。
またむくむくとオレの中で膨れ上がる怒り。
自分の短気さには心底あきれる。
「あら、今日も皆ここにいたの?兄さん探してるんだけど、知らない?」
バチバチとオレと翔の間で散る火花をかき消す、女神様の声。
凛々しく、そして美しい立ち姿が、とても眩しい。
「よお、明日香!今日は吹雪さん見てねぇぜ。またビーチにでもいるんじゃないのか?」
「十代、貴様!それはオレのセリフだ!あすっ、天上院君の手柄になるのはこのオレ様だけで十分だっ!」
翔には妄想を聞かれるわ、十代にはセリフを取られるわ。
やはり占いなんて、信じないほうがいい。
あぁ、きっとその方が、身の為だ。
「それがいないのよ。よかったら、一緒に探してくれない?兄さん、とてもじゃないけど、単位が足りなくて、佐藤先生が呼んでるのよ」
占いなんて信じないと。先ほど心に決めたというのに。
早くもそんな気持ちは、ふらふらとどこかへ逃走してしまったようだ。
「オレが手伝おう。コイツらには任せておけんからな」
バタバタと足でもがく翔。なぜか十代が必死に口元を押さえていた。
「ありがとう、万丈目君。十代達もありがとうね。また機会があったらよろしく」
次も、また次も、その次の次も。
きっとオレが君の役に立ってみせる。
「さぁ、行こうか、天上院君」
君の美しい瞳に、今この瞬間映っている事ができるのが、一番の幸せなのかもしれない。
次に占いで自分の星座が一位になるときは、いったい何日後なんだろう。
その時は、きっと夢中にさせるから
「何するんっスか、兄貴!せっかく明日香さんと話ができるチャンスだったのに!」
「いや、今日くらいはさ、いいんじゃないかな」
「兄貴は、本当、万丈目君に弱いね」
「内緒だぞ」
end
白化してた時は、確実にラブラブだったと思う。
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