捧げもの

□クローバー
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三つ葉の突然変異で生まれた四つ葉。あまり見かけない事から希少価値というものが付き、いつしか人はそれを幸福の訪れだと信じ始めたぁ。


だがぁ…んな迷信じみた事なんて信じない。そう思ってたぁ。馬鹿馬鹿しいと……嘲笑った事もあったぁ…だけど……


今は何よりも、その一葉を…手に入れてぇと願っちまっている…


「あー……いてぇ」


間抜けに声を出せば、途端に鋭い痛みが身体に走ったぁ。動かそうにも、身体の感覚は半分マヒしていて使い物にならねぇし、利き腕である左腕は見る影もない…。認めたくはねぇけど、見事な惨敗だぁ。


地下基地を襲った柘榴とか言うカスに俺はプライドごと左腕を砕かれたぁ。 自慢だったはずの剣技も、得意技だったはずの型式も……ヤツには全く通用しなかったぁ。恐らく、敵側は俺達の技を完璧に理解しているのだろう…最近仕上がったアーロの技さえもアイツは簡単に攻略していたのがぁいい証拠だぁ。


まぁ生死の確認をしなかった間抜けなカスのおかげで、どうにかまだ生きているみてぇだけどなぁ……


それに、神社で散り散りになった跳ね馬の方も気にかかる。俺の得意技が完全に攻略されていた事を考えると、恐らく敵はディーノの技さえも攻略済みだろう。ディーノの腕っぷしを疑うわけじゃねぇがぁ、万が一って事もある…アイツは少し爪の甘い甘ちゃんだからなぁ。早く伝えてやらねぇときっと油断するに違いねぇ。だから、アイツの元へと行かねぇと……


そう思うのに、身体は全く動こうとはしねぇ…それどころか、とめどなく溢れ出る血が、どんどん俺の意識を攫っていきやがる。


ちっ、くそぉ………アイツと約束したのに…この戦い……なにがなんでも絶対に生き残るってぇ…這いずったままでも生き残ってぇ、二人で一緒に生きるんだって誓ったんだぁ……ここで俺がくたばったと知ったら、アイツが泣く。俺にとって、アイツが流す涙ほど苦しいもんはねぇ。 アイツには、馬鹿みてぇに綺麗な笑顔が良く似合う。だからぁ……俺はここでやられるワケにはいかねぇんだぁ!


「このっ…くそったれぇ」


悔しい、悔しい!何故動かねぇ…このままじゃ…本当にまた……そう思った瞬間、急に意識は真っ白な空間に飲み込まれちまったぁ。






「……ク!!スク!」


消えゆく意識の中、聞こえる少し荒々しい音。幻聴かぁ? ディーノの声が聞こえる気がする。水を流れるような美しい旋律で、俺を呼んでくれる。ああ、きっと俺はココで死ぬんだなぁ。んな呑気な事を思いながらディーノの幻聴に耳を傾けた。


「しっかりしろ!スクアーロ!」


すると、パチッと頬に小さな痛みが蘇る。それを頼りにゆっくりと重い瞼を上げると、そこには少し埃を被っているがぁ、まだキラキラと輝く金髪が覆い尽くしていたぁ。だがぁ


「スク!?大丈夫か?今、ロマが止血してくれてっからな、頑張れよ!」


眉を八の字に下げ、今にも泣きだしてしまいそうな綺麗な顔。目の前に広がるのは、俺の大嫌いなディーノの表情…


んだよ……んな顔すんなよ…


「でぃ……の」


「ああ!俺だ!もう心配いらねぇからな!しっかりしろよ!」


ゆっくりと右手を伸ばせば、すかさず掴んでくれる。ああ…暖けぇ…。さっきまでの寒さとか暗さとか一気にふっとんだぁ。俺、生きてんだなぁ………。



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