お題小説

□一度きりのクリスマス
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「待ってよスクアーロ!置いてかないでってばぁ!」

柔らかな雪が足を掴む。
クリスマスのこの日、オレの通う中学では、生誕祭が行われるという理由でにぎわっていた。
昨日一日で降り積もった雪と、緑を彩る沢山の電飾が印象的だ。


「お前が遅いんだろぉ!早くしねぇと置いてくぞぉ!」

「もう置いていってるよぉ!」


重い足を少しずつ前にやり、昇降口の前でたたずむ彼の元へと急ぐ。


「うわぁっ!」


急いだのがあだとなったのか、雪に足を取られべたんっとその場に倒れてしまった。
顔にかかる雪が、とても冷たい。


「ったく……。何やってんだお前は……」


頭を抱え込み、露骨に嫌な顔をするスクアーロ。
オレは苦笑いをしながらも、かじかむ顔を上げた。


「おらよ。いつまでもんなとこで寝てんなぁ」


いつの間にか昇降口からこちらへ来ていたらしい。
手袋さえしていない、細長い指が見えた。


「ありがと、スクアーロ!」


オレはその指に掴まるり、体を起こす。
コートについた雪をはらい、昇降口に向かおうとした瞬間、チャイムが音を立てた。

どうやら、生誕祭が始まってしまったらしい。


「始まっちまったぞぉ。どぉすんだぁ?」

「ごっ、ごめん!オレのせいで……」


腕を組みため息を一つ。
あぁ……。
また怒らせちゃった……。


「別にお前のせいじゃねぇ」

「え?」


思いもよらない言葉に、ぱぁああっと顔を輝かせてみせれば、鬱陶しいと訴えられた。
軽い笑いを漏らしたあと、オレは静かに彼の手を握った。


「行こう!みんなと生誕祭ができないなら、二人っきりでやろう!」


冷たい彼の手に、自分の熱を送るように言う。
すると、いつもの苦笑いではなく、ふんわりと微笑む姿が見えた。


「まぁ、それもいいかもなぁ。見つからねぇように逃げるぞぉ!」

「うん!」


握り返される手のひらがとてもとても温かかった。



来年、また一緒にできるといいね。
君は何も言わず、そっと頷いた。

end

遅れたけど、めりくり!
ちなみに次の年にゆりかごが起こっちゃうという裏設定。
中学生なんだし、青春しなきゃ!
というわけで、仔ディノスクでした。


 

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