薄桜鬼
□できることなら嫌いになりたい
1ページ/1ページ
夏の夜風が涼しくて僕は縁側に座った。
一人しかいない家は静まり返っていて
今にでも君の声が聞こえる気がする。
「ねえ、千鶴ちゃん。なんで僕を置いていくのかなあ…」
心から大好きだった人
初めて添い遂げたいと思った人
でも君はもうここにはいない。
「…大好きだったんだよ」
君は僕より先に逝ってしまった。
土方さんと共に蝦夷で命を落としたそうだ。
それを耳にした時は信じたくなかった。
だから実際に確かめに行こうともしたけど、僕の体はいうことを聞いてくれない。
重たい体を無理にでも動かせばそれを嫌がるように咳が出て血が混じる。
君を守ることのできなかった僕の体と君を捕まえることができなかった僕は
苦しくて辛くて…悲しい。
君に逢うために早く死にたい。
「ねえ、千鶴ちゃん。」
できることなら嫌いになりたい。
―僕が自分を殺してしまわないように
2011118