デュラララ!!

□歪んだ愛の所持者
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無機質な携帯が音を立てたのは午前3時を過ぎた頃だった。
携帯のディスプレイに彼の名前がゴシック体で表示しているのを確認して
私は携帯を開いた。


「…臨也?」
「あれ?もしかして寝てた?」
「何時だと思ってんの?」

甲高い笑い声が電話越しから聞こえてくる。その笑いに釣られて私も
少しだけ笑ってしまった。

「亜子ちゃん、今すぐに玄関開けてくれないかな?」
「玄関?ちょっと待ってて!」

玄関を開けるようにせかす彼の言葉を聞いてから慌てて布団を剥ぎ玄関に向かった。
ストーブの温もりが切れたワンルームは雪が降った日みたいに寒くて
パジャマ一枚では肩が震えるくらい。冷たい足に身をまかせ玄関まで
辿り着くのには15秒もかからなかった。

「今から開けるよ」

彼はうん。とだけ答え興味深いような
機嫌溢れる声で

「早く開けてよね」

と呟いた。
その声を合図に温もりがない
鉄の取っ手を持ちドアを押した。

「…え?臨也?」

私は一瞬思考停止するところだった。
こんな真夜中に折原臨也が玄関の前に立っているのだから。
しかも先程まで電話をしていた相手が。

「そこまで驚く?まあ…君の反応が見れたからいいとするけど。」
「…悪趣味」
「とにかく中に入れてくれない?」
「あ、ごめん。寒かったよね。」

臨也は電話をする前から玄関に立っていたらしい。
さりげなく触れた臨也の手は冷たくてそのことを物語っていた。


「でもなんで?」
「何がかな?」
「なんでこんな夜中に?」
「ただ逢いたくなっただけだよ。利用価値としての君の存在が嫌になったからね。」
「ん?」


訳がわからず頭の中に臨也が言った言葉を要約する。
それを臨也が気づいたのかため息ひとつしてグイッと抱き寄せられた。
余計に訳がわからず呆然と臨也の体温に身をまかせてうずくまった。


「つまり、亜子ちゃんに俺が惚れたってことだよ」
「…えっ?!」


私は臨也の利用価値でしかないはず。
それは初めて声を掛けられた時から分かっていたことだ。
だから、恋をしないように頑張った。


「…返事は?」


でも、好きだったんだ。
私も彼も。


「好きです。」
「うん。その言葉を待っていたよ。君は分かりやすいんだから。」
「気づいてたんですか…」
「分かりやすいんだよ亜子ちゃんが。」


抱き締めたまま折原臨也は私に愛の言葉を告げる。
私は彼の温もりに包まれたまま愛の返答を告げる。


ただ嬉しかった。


歪んだ愛を所持した彼の告白が。




20110212

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