novel

□心配性
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朝、目覚めたら春が横にいなかった。


こんな朝早くどこへ行ったんだろう、と。
私は重い体を起こしリビングに向かう。

やはりいない。

少し心配になった。

私は心配性だなと、自身でも思う。

泥のついたスニーカーのかかとを踏んづけてはいて、家を後にした。

電話をかけてみる。

「トゥルルル トゥルルル...留守番電話サービスセンターに接続しました。メッセージの...」

春は電話にでる気配がない。

少々、腹立たしくなり何度か連続してかけるが、やはり出ない。

春が行きそうな場所をひたすら回ってみたが...いない。

時計は既に9時を指していた。もう、二時間も走り回っている。

歩道橋の上で息を切らし、手すりに体重をかける。
私は膝から力が抜け、スルスルと縮こまってしまう。
すると、私がぼんやりと見ていたアスファルトに1つの影がたつ。
思わず顔をあげる。すると目の前に春がたっていた。
私は本能的に春に抱きつく。

「ん―おまえ...心配したんだぞ...」

「兄貴...」

「...馬鹿」

「...兄貴が言うんだったら俺は馬鹿だ。」
「....馬鹿じゃない。」

「じゃあ馬鹿じゃない。」

「...やっぱり馬鹿だ。」

「..はは。何だよ、それ?」

2人の成人を迎えた男性が抱き合ったまま、そんな事を言っていた...

外から見たら気持ち悪いものだったに違いない。

「おまえ...どこ行ってたんだよ。」

「フラフラしてた。」

「...なんなんだよ...人を心配させておいて...」

「...ごめん兄貴。でも探して欲しかったんだ。.....兄貴に。」

end
→あとがき
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