□非ボンゴレ編
1ページ/5ページ

15、チカラ

――素直になれればどんなによかったか――



あのあとずっと屋上にいた。

何かあると屋上に逃げてしまうのが最近の私の癖。

雲雀さんとは、今は顔を合わせたくない、だけど心のどこかで来てくれると期待している自分がいる。


…そんな素直になれない自分が嫌いで仕方ない。


さっきの件だって私が、「仲直りしたい、一緒に戦いたい。」
そう言えば済む話だった。

なのに、意地ばかりはって「時が来たら。」

なんて…。

どうせそのときが来ても言える訳がないのに。



「っ、誰?」

先程から気が付いてはいた誰かから向けられる視線。

しかし、その視線が一瞬にして殺気に変わったのを感じ取る。


バキューーーーーンッッ!!!


空に響く銃声。

暢気に囀る鳥たちも逃げ出す。


ブチュッ!!

飛び散る赤。


私は顔を顰めつつ肩を押さえる。

「っ!!」


銃の存在に気づかず、うまく交わせなかった。

そのため銃弾が肩を掠ったのである。


傷口が…熱い。



「姿を…現しなさいよ…。っぁ。」

痛みに耐えながら声を絞り出す。

その声に反応して、誰かが姿を現す。



女だ。


いかにもマフィア、漆黒のスーツに身を包んだそいつは銃を片手に持っている。


一瞬、目を見開く。
しかしすぐに敵だと判別し、護身用の小刀を取り出す。


普段は紅雪椿という2本の短刀を持っているが、さすがに学校にそれを持っていくのは物騒なのでいつもは小刀しか学校へは持っていかない。

銃なんかにこれ一本で戦えるか不安ではあるが、生きるか死ぬかの二択なら私は先方をとる。


「貴方は誰なの?何で私を狙うの?」

ふと、いやな予感が頭を過ぎる。

桃華は…皆は無事なのか…。


「…ボンゴレ。」

しかし、その一言に我に返る。


「ぼ…ん…ごれ?」

その言葉を狂ったように何度も繰り返す。


なぜなら、あのときのことを全て思い出してしまったから…。


そんな事関係ないと言わんばかりにまたもや銃口をこちらに向ける女。

もう、駄目だ…。

諦めて瞼を閉じた瞬間。

何か金属と金属のぶつかるおとがした。


その音に自然と目を開く。


一番先に瞳に映したのは、


(トンファー?)

その見慣れた武器に思わず目を丸くする。

それに安心感を覚えたのか、自然と涙腺が緩む。

「その辺にしないと咬み殺すよ。」

そんなお決まりのキメ台詞も涙腺を崩壊させ。

「っ…ひっく。」

とうとう涙が頬を伝う。

「…ひ…ばりさんっ。」

ただただ、嬉しかった。

だから、その一時だけ、恐ろしい過去をも捨て去ることが出来た。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ