リクエスト作品

□想い合えば答えはそこに
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『リクオ様』



君から名前を呼ばれるといつもくすぐったい気持ちになるんだ。





彼がもっと僕の名前を呼んでくれないか期待するけど実際は・・・・














「リク夜様。今夜のパトロールのご報告に参りました」

「おう」

「まずこの地区では………」



たまたま僕が歩いていると黒羽丸と兄さんの会話が聞こえた。

いいなぁ……、兄さんは黒羽丸から話し掛けられて。

黒羽丸は仕事熱心だから普段は仕事が忙しくて僕に話し掛けることは少ない。

話し掛けてくれたとしてもリク夜兄さんがいない時に言伝を頼まれるぐらいだ。

あーあ、本当に兄さんの立場は羨ましいよ。

こういうときだけは誰からも話し掛けてくれる頭としての立場はいいよね。










好意を持っている相手から話し掛けられるから。




僕は黒羽丸のことが好きだ。
父親譲りの真面目な所や時々、本当に時々見せる優しい笑みを浮かべる所なんか好きなんだ。
正直な話、黒羽丸の全部が好き。

黒羽丸には言ってないけどね。






兄さんと黒羽丸の会話をいつまでも見つめ続けてもしょうがないから自分の部屋に戻ることにした。









黒羽丸が僕のことを見ているとも知らずに。





〜〜〜〜〜〜〜〜

自室に戻る途中、僕はふと庭に目を向ける。

月明かりで池の水面がキラキラしていて中々綺麗だった。





すぐに部屋に戻るのはもう少し後でいいかな…

僕は縁側に座ってその景色を見ることにした。

庭には小妖怪がちらほらといるけど基本は静かだった。

夜風もそんなに肌寒いものでなく、調度良かった。





僕はその縁側で色々と考え事をして、部屋に戻ろうと思っていた時だった。





「リクオ様。部屋にお戻りになられますか?」

一番聞きたかった声がする。
振り返ると後ろには寝巻を着た黒羽丸の姿だった。

「黒羽丸?あっ、僕なら後もう少しここにいるよ!」

「そうですか。ところで
もしリクオ様が良ければ・・・・・











お隣り宜しいですか?」

黒羽丸が僕に笑いかけながら尋ねた。

僕は黒羽丸の問いに心臓が高鳴ってちゃんとした感じの返事か返せたか分からないけど黒羽丸が隣に座ってくれたことに返事を返せたことに安堵した。

黒羽丸は座るとさっきの僕と同じ様に景色を見つめていた。

………景色を見に来ただけかな。

しばらくしても話し掛けない黒羽丸に僕はちょっとした寂しさを感じながら俯いていた。



バサッ



いきなり僕の肩に何か被さった。





それは黒羽丸が寝巻に羽織っていた上着だった。

「黒羽丸、これ・・・」

「勝手ながら申し訳ありません。しかし、夜風がリクオ様のお体に悪いと思いまして掛けさせて貰いました」

そう言われると確かに夜風が少し肌寒くなっていた。
気づくと確かに鳥肌もたっている。

「本当だ……ありがとう、黒羽丸。君は寒くないの?」

「いえ、俺は大丈夫……」

「やっぱり駄目、君は寒くないかも知れないけどそんなに薄い格好だと君が風邪をひいちゃうよ」

僕は寒くないと言っても薄着をしている彼がどうしても気にかかって、彼の上着を返そうとした。

そしたら急に黒羽丸は僕を引き寄せた。

「わあっ!?」

「全く……聞かない人ですね、これならお互い暖かいから大丈夫ですよ」

黒羽丸の顔が、声が、熱が僕の本当にすぐ近くにあった。





僕は黒羽丸に引き寄せられた驚きと彼に寄り添う様に歩かないと立っていられないぐらいの嬉しさとやっぱり僕も男だから頼りない歩き方をしていることへの恥ずかしさで頭の中がぐるぐるしていた。

気づくと僕は自分の部屋の前に黒羽丸といた。

「着きましたよ、リクオ様」

「うっ、うん…送ってくれてありがとう。黒羽丸」

「これもリクオ様の為を思えばこそです。ではお休みなさいませ」

「うん、お休み。黒羽丸」

黒羽丸と別れた後、入った布団の中で黒羽丸のことを思い出した。

黒羽丸に意外と強引なところがあるのは新発見だったかな。

でも少しでも黒羽丸と話せて嬉しかったなあ!

少し浮かれ気味にそう思っているとふと疑問に思った。





結局黒羽丸は何で僕の隣にわざわざ座ったんだろう?
景色を見るならもっと良い場所があると思うのに……
そう思いながら僕は眠りについた。












彼と恋人同士になれたならと想いながら……





〜END〜

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