拍手@小ネタ集

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並はずれた身体能力。



研ぎ澄まされた直観力。



そして・・・光に瞬く銀髪と全てを見通す赤い瞳。



攘夷時代の英雄、白夜叉は、戦争が終わるなり高杉達の前から姿を消した。



それを、高杉は見逃さなかった。



ずっと見ていた、お前の事・・・。



だけど、お前は平凡な暮らしに飲まれていくたびに、弱くなっていったな。



あの頃の鬼神はどうした?



お前はそんなに弱い奴だったか?



・・・なァ、白夜叉よ。



俺はそんな化け物みたいなお前を愛してたんだぜ、銀時?



だから・・・俺が戻してやる。



白夜叉に、覚醒してやるよ。


「クククッ・・・万斉、銀時の様子はどうだ?」



高杉はキセルをふかしながら隣に座っている万斉に視線をうつす。



「まだ眠っているでござる」



「・・・そうか・・・・・・目覚めた時が楽しみだなァ?」



狂気に満ち溢れ、絶望さえも惜しまない鬼になった銀時は、一体どんなに美しいだろう?



考えるだけでゾクゾクする。



刀を持たせれば、すかさずに目の前の敵を斬り殺すだろう。



そして、俺にしか従わない。



・・・従わせない。



お前は俺のモンだ、銀時・・・。



「・・・・・・・・・・・・今日は、月が綺麗だな」



怪しき隻眼は、ただ雲に隠れるばかりの月を見ていた。








「・・・・・・ああああイライラする!!!!」



ダンッ、と机を叩く土方。



日ごろの仕事にくわえ、あの馬鹿(総悟)や近藤さんがやらかした始末書やらなんやらで、俺の自室はプリントまみれになっていた。



減らない書類。



作れない時間。



寝る間を惜しんで仕事しても、このザマ。



そして誰も手伝おうとしない。



なんて白状なやつらだ・・・。



「ふぅ・・・」



土方は一服しようと、煙草に火をつける。



そういや・・・最近はアイツにも会ってねェな。



もう一週間以上、言葉も交わしてねぇ。



今更会いに行ったらアイツは怒るか?それとも悲しむか?



・・・ケーキ片手に行ったら、喜んでくれそうな気もするけど。



「・・・・・・」



銀時の事を考えていると、何でか気持ちが和らいで落ち着けた。



会いたい。



・・・銀時に、会いたい。



「・・・・・・よし」



俺は、書類を投げ捨てて、万事屋へと駆けた。



途中に、苺のショートケーキを買ってから、ななめにしないように慎重に走る。





万事屋が見えてきた。



すると、階段には人影が・・・アレは、チャイナか?



「・・・チャイナ?」



土方は下から声をかける。



すると、神楽はズルッと態勢を崩して階段から転げ落ちる。



その事に土方は驚いて、急いで受け止めた。



「ちょ・・・オイ!チャイナ!!」



支えた体には、血がベットリとついていた。



顔もいつもより増して青白くなっている。



この傷は・・・今さっきつけられたようなものではない。



「・・・チャイナ、何があった?」



土方はゆっくり静かに問いかける。



神楽は、しびれる唇を必死に動かして、言葉を紡いだ。



「ぎんちゃ・・・が・・・・・・・・たか・・・・す、ぎ・・・に・・・つかま・・・」



ゲホゲホッ、と咳き込んで血を吐く神楽。



「チ、もう喋んな・・・!」



土方は頭を撫でると、万事屋のソファに横たわらせた。



「ぎんちゃんを・・・・・・・・・たすけて・・・」



俺に状況は分からない。



何があったのかもしらない。



だけど・・・



俺の大切なやつの大切な人を泣かせるなんて、許さない。



「・・・・・・・・・・くそっ!!」



土方は神楽の涙を最後に、万事屋から出て行った。



夜が更けていく歌舞伎町を走る。



俺はただ、一人だった。


















次回予告











「なんで・・・なんでだよ銀時!!!!!」



無造作に、だが的確に急所を狙い定め、振りかざす刀。



銀時の目には何もうつっていなかった。



ただ機械的に、高杉の言いなりになっているだけ。



「ククククッ、残念だったなァ幕府の狗!もう銀時は・・・お前の事なんざ覚えちゃいねぇよ」



怪しく笑う高杉に、気が削がれた。



ブンッと振りかざされる鋭い刀。



「−−−−−−−−−−!!!!!!!」



しまった、殺られる・・!!!!



・・・。



・・・・・・・・・。



「・・・・・?」



痛みが襲ってこない・・・?



土方は静かに目を開けた。



「!!」



ポタポタと地面に落ちる涙の粒。



それは・・・銀時の瞳からこぼれおちたものだった。







END


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